英国の長期金利がトラス・ショック時を超えた
8日の債券市場では長期金利の指標となる英10年物国債の利回りが前日比0.11%高の4.79%に上昇(価格は下落)した。2022年の「トラス・ショック」を超えて17年ぶりの高い水準となった。
労働党のスターマー首相による予算案が財政拡大方針を掲げ、賃金上昇による根強いインフレでイングランド銀行の利下げペースが遅れることへの警戒感が出ている。政府の国債増発も重なって売られやすくなっていた。
2022年9月に英国でトラスショックが起きたことを覚えているであろうか。
英ポンドが対ドルで過去最安値を記録し、英国債が大きく売られたという出来事である。これがトラス・ショックと呼ばれた
ジョンソンの党首辞任を受けて行われた保守党党首選挙で勝利し、2022年9月6日に首相に任命されたのがメアリー・エリザベス・トラス氏であった。英国で3人目の女性首相で、女王エリザベス2世に任命された最後の首相でもあった。
トラス政権は1972年以来の大規模な減税を打ち出した。クワーテング財務相は不動産購入時の印紙税を削減。個人や企業が直面する光熱費の高騰に対し、今後6カ月間で600億ポンド(約9兆5000億円)を拠出して支援することを確認。高額所得者に対する45%の所得税最高税率を廃止し、基礎税率も20%から19%に引き下げる。ロンドンの金融街シティーに対する規制自由化も約束し、バンカーの賞与制限は撤廃する。
英債務管理庁(DMO)は23日、2023会計年度(2022年4月~2023年3月)の国債発行額が1939億ポンドに増額されると発表。4月時点では1315億ポンドを計画していた。
イングランド銀行は22日に0.5%の利上げ決定を発表し、保有する英国債の市場での売却を始めると発表した。これを受けて英国債は22日に10年債利回りは3.49%と16日の3.31%から大きく上昇していたが、トラス政権の1972年以来の大型減税と国債増発を受けて、火に油が注がれた格好となった。
23日のロンドン市場では英国債の利回りが急騰した。2年債利回りは前日より一時、0.4%あまり上昇して4%を上回り、2008年10月以来約14年ぶりの水準となった。政府債務増への懸念とともに、減税策がインフレをさらに加速させかねないとの懸念も強まったのである。