賃貸より所有の方がお財布事情が楽だから…高齢層の住宅事情と労働時間との関係をさぐる
定年退職を迎えるであろう年齢において、多分に生活費の補てんに使われる労働の時間と、住宅事情との間には、どのような関係があるのだろうか。厚生労働省が2018年3月に発表した、中高年縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)(※)特別報告の結果から確認する。
次に示すのは該当年齢における男性の就業者に限定した、年齢階層別の居住住宅状況別の労働時間。複数年数調査の結果を基に計算されている。
労働によって得られる対価は時間のみに影響されるのではなく、労働内容や勤め先によっても大きく変わってくる。また年が上になるほど軽度の労働しかこなせず、時間単位で得られる対価も少なくなるため、同じ額を得るためにも長時間の労働が必要になる。一方で心身の負担を考慮すると、年とともに長時間の労働は難しいものとなる。
結果としては50~51歳と68~69歳でイレギュラーが生じているものの(回答者数が少ないのが原因だろう)、所有住宅住まいの方が労働時間が少ない結果が出ている。時間だけが労働の対価に影響するわけではないものの、同じ年齢ならば心身上はおおよそ同じ条件下にあると考えられるから、所有住宅者の方が労働時間が短くなる=短くて済む、つまり多分に該当するであろう、お金を得るために働いている場合は、少ない労働時間で要件が済んでしまうと推測できる。
要は賃貸住宅住まいの人は住居費の負担が大きいため、長時間働いて稼ぎを多く得なければならなくなる、所有住宅住まいの人は住居費の負担が賃貸住宅住まいよりも小さいため、労働時間も短くて済むという次第である。
他方、賃貸住宅住まいであろうと所有住宅住まいであろうと、年とともに労働時間は減少していく。定年退職は大体60~65歳だが、53歳ぐらいから労働時間の減少が生じ、60歳以降で大きな減りが見受けられるのも分かる。就業は続けていても残業が減ったり時短扱いにしてもらったり、退職をして短時間・軽労働の仕事に再就職するというケースが増えてくるのだろう。
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※中高年縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)
団塊の世代を含む全国の中高年者世代の男女に対する追跡調査で、2005年以降毎年1回、同一人物を対象に各種質問が行われている。今回対象となる第11回目で10年分の結果が出そろい、対象者が全員60歳以上となったことから、特別報告の名前で総括的な検証が行われている。第11回目の調査分は2015年11月第1水曜日に郵送調査票の送付と郵送返送方式で実施されたもので、対象者のうち第1回調査から第11回調査に連続して回答している人は2万101人。対象者年齢は第11回調査時点で60~69歳。
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