アベトレードと呼ばれる株価の上昇と円安のシンクロの要因
2000年以降の日経平均とドル円の推移を、手元のデータをグラフ化して見たところ、2012年11月あたりからの動きが、かつてない形でシンクロしていた。いわゆるアベノミクスの登場により、ドル円と日経平均の動きはかつてないほど連動していた。
円安イコール株高という図式は当たり前のようにみられているが、実際にはそれほど連動性は高いわけではない。2000年以降でみても極端に連動していたような動きはそれほどみられない。これはその時々により、ドル円と日本の株価に影響を与える材料が異なっていたためであろう。
2000年4月に日経平均は2万円台を付けていたが、ここから2003年4月に7600円台で底入れするまで、ほぼ一本調子で下落した。これは米国のITバブルの崩壊と、2001年の米国の同時多発テロの発生、さらに国内では不良債権問題が燻り、日経平均は下落トレンドとなっていた。
2000年4月から2003年4月にかけてのドル円は、米国の同時多発テロによる金融市場の混乱により、ドルが売られたものの円も売られて、むしろ円安へとなり、2002年にかけて130円台へと上昇しているのである。
2003年5月、りそな銀行に対する資本注入で「政府は大手銀行を潰さない」といった意識も強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われた。さらに海外投資家の旺盛な買いに支えられ、日経平均はバブル崩壊後の最安値となった2003年4月に底入れし、上昇に転じた。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めていく。外為市場では、りそな銀行破綻・国有化をきっかけに円高が進行し、2004年には100円に接近した。
2006年には日銀の量的緩和政策とゼロ金利政策の解除が実施された。2007年に日経平均は18000円台をつけ、ドル円は120円台をつけていた。
2007年以降にいったん日経平均とドル円の連動性が高まる。円高と株安が同時に発生したのだが、これはサブプライム問題からリーマン・ショックに至る過程での世界的な金融経済危機が要因となっていた。日経平均は2006年10月に7000円を割り込み、引け値としては2009年3月に7000円近くでバブル崩壊後の最安値をつけた。
その後のギリシャの債務問題を発端とした欧州の信用危機の発生により、円が買われドル円は2011年に75円台をつけ、ここがドル円の過去債低水準となった。
このように日経平均とドル円は、ボトムアウトしたタイミングにはかなり違いがあった。それにもかかわらず、2012年の11月頃から同時に急反発することになる。きっかけは安倍自民党総裁のリフレ発言であり、円買いや日本株のショートがかなり溜まっていたところに、ヘッジファンドが大量の円売り・日本株買いを仕掛けたことが要因といえる。これはアベトレードとも呼ばれているようである。
ここでシンクロ現象が発生していたのだが、グラフを見ると、ここ数か月は日経平均の上昇に比較して、ドル円の戻りが鈍くなり、その連動性が薄れつつあるようにもみえる。ここからはあらたな材料で、それぞれの動きをしてくることも予想される。ギリシャ問題やFRBの年内利上げの可能性などが材料視されてくると思われるが、あらたな動きが始まっているとの見方も可能かもしれない。