西村ヒロチョが語る「あきらめる」の意味と、そこからの伸びしろ
日常の出来事を次々とロマンティックに変えてしまう“ロマンティックネタ”が代名詞となっているピン芸人の西村ヒロチョさん(37)。日本大学芸術学部音楽学科を卒業し約40種の楽器が演奏できる多才さも持っています。来春上演される高畑充希さん主演のミュージカル「ウェイトレス」にも出演が決定。さらに活動の幅を広げていますが、転機となった先輩からの言葉とは。
新型コロナ禍で見えたもの
来月、芸人が即興でネタを組み上げていく舞台「THE EMPTY STAGE GRAND 2024 SUMMER」に出演させていただきます。
台本なしで、その場で面白さを作っていく。次に何が起こるか分からない。瞬発力も、空気を読む力も求められる中で、自分に何ができるのか。もう何年も出してもらっているイベントなんですけど、毎回大きな刺激をもらっています。
この舞台が足腰を強くしてくれていることを痛感しますし、そういった積み重ねもあって、来春、高畑充希さん主演のミュージカルにも出演させてもらうことになりました。
本当にありがたいばかりのことなんですけど、少し前、新型コロナ禍の最中は本当に大変でした。
仕事がどんどんなくなっていく。なんとかしないといけないと思って「西むらヒロチョ」に一時的に改名しました(笑)。それくらい追い込まれましたし、いろいろなことを悩み、考えた時期だったんですけど、それがあったから今があるとも思っています。
頭がいっぱいいっぱいになる中で、先輩のあべこうじさんから言ってもらったことがすごく心に刺さりました。
「まだ来ていない未来や、過ぎた過去で悩むのはもったいない。人間は今にしかいないのに」
言葉にすると、本当にその通りというか、当たり前のことなんですけど、自分の状況もあいまってこれ以上ないくらい刺さりました。
そして「ガクテンソク」の奥田さんからも言葉をいただきました。
「“あきらめる”という言葉は“明らかにする”ということがもとになっている。お釈迦様でもできないことがあるし、それを明らかにすることで次が見えてくる。それがあきらめるということ」
これも本当に心に染みる言葉でした。言葉をきっかけにいろいろなことを考えました。
恥ずかしながら、もともと自分は場を仕切る側の人間だと思っていたんです。ただ、コロナ禍で仕事が少なくなっていく中で、今一度自分の特性を考えた時に、そうではないんだなと。イジられることによって花開くところも多々ある。
大変な中でいろいろ考えることで、いただいた言葉をきっかけに考えることで、結果、本当に心が楽になったんです。ありがたいことに。
これからも、舞台には立ち続けたい。それはしっかりと考えています。センスあるワードを一言ぶつけてドカンとウケる。そういうことは自分にはできないと思うんですけど(笑)、泥だらけになりながらも舞台に立つ。それしかないんだろうなと。
マイケル・ジャクソン
吉本興業に入った頃、履歴書に「将来の夢 マイケル・ジャクソン」と書いてたんです。大きすぎる目標なんですけど(笑)、今思うと、実は理にかなった目標だったんだなとも思います。
笑いだけではなく、ミュージカルだろうが、いろいろなパフォーマンスだろうが、とにかくできることを全力でやってお客さんに楽しんでもらう。そんなエンターテイナーになる。それが今自分が考えていることですし、そこを究極まで高めていったらマイケル・ジャクソンになるのかなと。
ま、どちらにしても、何にしても、大きな目標ですけど(笑)、少しでも近づけるよう積み重ねをしていきたいと思っています。
(撮影・中西正男)
■西村ヒロチョ(にしむら・ひろちょ)
1987年2月9日生まれ。東京都。吉本興業所属。東京NSC15期生。日本大学芸術学部音楽学科卒。ピアニスト・清塚信也とのセッションなどでも話題を呼ぶ。出演芸人の実力が試されるような即興ネタが展開されるイベント「THE EMPTY STAGE GRAND 2024 SUMMER」(9月10日〜12日、15日〜18日、 東京カルチャーカルチャー)に出演。また、来年4月、5月に上演される高畑充希主演のミュージカル「ウェイトレス」にも出演する。