就活生が不安で活動量が増え、各社への採用応募数も増加。しかし、その先は辞退者増という「ぬかよろこび」
■今の就活市場は企業側も厳しい
先日、学生の視点から今年の採用市場について記事を書きました。求人数が思ったより減らない可能性が高いのに対し、不安に駆られた学生側の就職活動量が増えることで、就職活動が激化してしまうという内容でした。
今回はこれを、企業側の視点で考えてみたいと思います。上の書き方だけ見れば「学生苦戦=企業楽勝」と思うかもしれませんが、私は実はそうならないのではと思っています。下手をすると、応募者が激増するのに採用はうまくいかない「ぬかよろこび市場」になるのではないかと恐れています。
■採用活動のスピードダウンが辞退の増加を招く
その理由は、応募が増えた理由が、求職者数の増加ではないからです。新卒採用は特殊な労働市場で、基本的には毎年ほぼ同じ人数の学生が市場に出てきます。景気などによって求職者数自体が変動する中途採用とは違います。
つまり、今、各社においてインターンシップや採用選考の応募者数が増加しているのは、学生一人あたりの就職活動量が増えているからです。
学生は最終的には一社しか入社できませんから、結果、辞退が増加する可能性があります。これを「ぬかよろこび」と言っています。考えれば当たり前のことですが、目の前の大量の応募者数だけをみると、見逃してしまう視点ではないでしょうか。
もちろん、応募が来ないよりも来る方が、採用にはプラスであることには変わりありません。しばらく続いていた、何をしてもそもそも応募がない「売り手市場」を経験された方であればわかることだと思います。
しかし、大量応募がある時期には、大量応募への必要な対策がこれまたあるのです。それは採用活動のスピードアップです。大量に応募があれば、その対応には今までよりも多くのリソース(マンパワー、コスト、時間)がかかります。
もし、リソースを増やさずに大量応募を迎えれば、採用活動の遅れにつながります。しかし新卒採用活動には旬の時期があるので、スピードダウンが辞退の増加を招き、結果、採用の失敗につながるのです。
■ダメなスピードアップ、よいスピードアップ
そこで各企業は、大量応募をいかに速く対処していくのかに知恵を絞るわけですが、多くの企業が間違った対処でスピードアップを行っています。
最悪なのは、大学などの属性でバサッと切ってしまうという方法です。大学の偏差値はある程度基礎能力などとは相関はあるでしょうが、個々人のレベルになれば個人差の方が大きい。それなのに、学校名だけで切ってしまうのは論外です。
次に良くないと思うのは、とにかく応募のハードルを上げることです。意地悪であるかのような重たいエントリーシートを提出させて、受けなくさせるのです(以前、ライフネット生命にいた際、「重い課題」を課していたのは私ですが、これは別の理由がありますが、それはどこかの機会で)。これでは、優秀で引く手あまたな人材から「面倒だ」という理由で去っていきます。
それではどうすればよいのか。例えば、適性検査を最初の段階で行うことです。近年は「ピープルアナリティクス」といって、人事もデータ分析をベースに行われるようになってきましたが、自社の高業績者になりうるパーソナリティのタイプがわかっていれば、それを採用に転用することができます。適性検査であれば、WEBなどを用いれば何百人でも何千人でも一気に選考することができ、スピードは上がります。
録画面接なども良い手法です。応募者と面接担当者の時間と場所を合わせる手間も必要なく、これまた一気に大量に受験してもらえます。録画を見て評価する時間は必要ですが、再生速度を上げて見たり(実際に多くの会社が行っています)、AIに参考評価をしてもらったり(これもすでに世に出ています)すれば、個別にオンライン面接をするよりもスピードアップにつながります。
■最後の手段はアウトソーシング
以上、スピードアップ方法の例をあげてみましたが、皆さんの会社の事情によってできることとできないことがあると思います。それを早く検討して、応募者を取りこぼさない方法を計画しなければ、「買い手市場」ももったいないことになってしまうことでしょう。
最後の手段はアウトソーシングです。スカウトメール打ちや書類選考などの初期選考、面接日程調整など、各採用プロセスを外部に出している企業は多々ありますし、採用アウトソーシングサービスを提供している会社もいくつもあります(私の会社も実はやっています)。
ともあれ、今年の採用は「スピード!スピード!スピード!」です。どうすれば、スピードアップできるか考えてみてください。蛇足ですが、これは早期選考をしろという意味ではありません。来た学生を待たせることなく対処するという意味ですので、あしからず。
※キャリコネニュースにて人と組織についての連載をしています。こちらも是非ご覧ください。