理想はこれだけ、でも予定はそれより少ない…夫婦世帯の子供数の思惑内情
理想数まで予定数を上げない理由、お金と高齢出産忌避
子供を持つ思惑を持つ夫婦の多くは、理想数よりも少ない予定数を想定している。なぜ理想数より少ない値で予定ラインを設定しているのか。その実情を国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月15日に公式サイトにて公開した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第15回出生動向基本調査」の調査結果から確認していく。
「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」において、「なぜ理想の子供数まで予定として産もうとしないのか」、その理由を複数回答で聞いた結果が次のグラフ。妻の年齢別に区分してあるので、夫婦の、特に妻の事情によって大きな変移があるのが確認できる。
トップは「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」。これは差異があれど、妻の年齢に関係なく最上位にある。他に主な傾向を見ると、
・「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」「家が狭い」は妻の歳が上がると共に減少する。世帯主の収入アップなどで、金銭的余裕が生じるからか。
・「高年齢で産むのはいや」「育児の精神的・肉体的負担に耐えられない」「健康上の理由」「欲しいけれど出来ない」は大よそ高齢になるにつれて増加する傾向がある。高齢出産の難しさを再認識させられる。
・「夫の家事・育児への協力が得られない」は若年の妻の方がやや高い。若夫婦だと夫の理解が得にくいのかもしれない。
・「自分(妻)の仕事に差し支える」は若年の妻の方が高い。共働きが多いか、自らの仕事へのこだわりが強い可能性が高い。
などが確認できる。
これらの値の総計を前回調査結果比(5年前比)で見たのが次のグラフ。
金銭的束縛や高齢出産を嫌う理由がやや後退した代わりに、望んでいるが身体的に難しいとする意見が増加しているのが確認できる。夫婦世帯の全体的な高齢化も一因だろう。
具体的な理想・予定子供数別で確認
次に示すのは「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」における、「理想子供数と予定子供数の内訳別に見た、理想の子供数を持たない理由」。子供の数と、「理想より予定が少ない理由」について、何らかの関係があるのか否かが分かる。
ポイントはグラフ中に赤い丸で示した4つ。上から順に「理想も予定も子供数が多くなるほど、金銭負担を重圧として認識し、理想子供数より減らす傾向がある」、「予定子供数が少数の夫婦では、望んでいるができない場合が多い(主に身体的状況をある程度自認している。「健康上の理由」も同じ傾向を示していることから、明らか)」、そして最後の2つは合わせて、ひとつ目と重なる部分があるが「理想も予定も子供数が多くなるほど、自分自身や周囲環境との調整が付きにくくなる」である。
概して「予定数が少ない夫婦は身体的な問題」「予定数が多い夫婦は周囲環境や経済的な問題」が重しになっていると解釈できよう。
理想子供数以下の予定子供数を計画している夫婦の多く(とりわけ若年層)は、その主要原因として「経済的な問題」を挙げている。これは「現状経済が厳しい」「経済状態が良好になれば出生率・子供数の増加が見込める」ことを意味するが、同時に「経済状態を見据えた上で、夫婦が出生や子供数をコントロールする傾向が強まっている」ことをも表している(「経済的な問題」と認識しているからこそ、子供の数を意図的に押さえている)。
この動きは新興国の少なからずの国で見られる傾向「貧しいならばさらに子供を産み、少しでも働き口を増やす」との考えとは逆行している。これは子供が成人になるまでの保護者としての教育・養育方針の違いであり、概して先進国ほど「子供が成人になるまで両親が手厚く保護する」傾向が強まるため、必然的に家庭全体の経済的負担も大きくなるから。
つまり「先進国ほど家計における子供に対する、保護のための負担が大きくなる(時間の長短だけでなく期間単位レベルでも)」「経済的観念も高まる」「従って子供の保有数を計画する際にも”ソロバン勘定”の要素が強まり、必然的に(色々な意味で)無理な人数を出産しなくなる」次第。これが先進国病たるゆえんではある。無論出生率の低下には、その他にも多数の理由、例えば新生児などの死亡率の低下も一因ではあるのだが。
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