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やさしさ怪獣・明石家さんまがふりまく幸せのしぶき

中西正男芸能記者
「漁港の肉子ちゃん」の取材会に出席した明石家さんまと大竹しのぶ(撮影・中西正男)

 明石家さんまが企画・プロデュースしたアニメ映画「漁港の肉子ちゃん」(6月11日公開、渡辺歩監督)の完成報告会が26日、都内で行われた。

 主役の肉子ちゃんの声を演じた元妻の大竹しのぶや、木村拓哉と工藤静香の長女で肉子ちゃんの娘・キクコ役で声優に初挑戦したCocomiらも登壇。

 漁港の船に住む肉子ちゃんとキクコを描くハートフルコメディーで、作家・西加奈子さんの小説にさんまがほれ込んで映像化した。

 大竹の隣でマイクを握ったさんまは「こんなに拍手で迎えられたら、再婚したほうがいいんでしょうか」と冒頭からフルスロットル。

 さらに、主題歌を務めた10歳の稲垣来泉がゲストとして登場すると「10歳でしっかりしてる。我々は子育てに失敗した」と大竹も巻き込んでぼやく畳みかけを見せた。

 ただ、大竹も負けていない。「こんなに良い映画を作る人なんだと思いました。ぜひ、家族で見てほしい。…あ、ごめん、家族いないんだよね」とすぐさまカウンター。

 終始、ボケまくるさんまに大竹が的確なツッコミを入れる展開となったが、実は、会見では語られなかったさんまから大竹への配慮が作中にはあった。

 鼻歌交じりに肉子ちゃんが食事の支度をするシーン。そこではさんまの提案で3曲がリストアップされた。

 採用されたのは大竹が心酔するシャンソン歌手、エディット・ピアフの「愛の讃歌」だったが、あと2パターン、幻のテイクも収録されていたという。

 「1曲は大竹さんのデビュー曲『みかん』。もう1曲はさんまさんが好きな映画『クレイマー、クレイマー』のテーマ曲。いずれも大竹さんに花を持たせつつ、見る側はクスッと笑える選曲です。オシャレなプレゼントであり、二人の信頼関係も表している。みんなをハッピーにするさんまさんらしい選曲だなと」(同作スタッフ)

 ストーリー上でも、そして、現実世界でも、あらゆるやさしさが絡み合った作品となったが、筆者もこれまで取材する中で、さんまに持つイメージの1位は「面白い」ではなく「やさしい」というもの。しかも、どのやさしさもさりげなく、そして、どこまでも深いものだった。

 以前、Yahoo!拙連載で愛弟子とも言える村上ショージに話を聞いた。ショージが結婚したのは1989年。当時は知名度もなく、金銭的にも全く潤沢ではなかったが、ショージは豪華な結婚式をハワイで挙げた。

 ショージによると、結婚を考えていた頃、さんまから「オレも、よう知らんねんけど、こんなタイアップ企画が来たみたいやわ。お前、ラッキーやな!タダでハワイで結婚できるがな」と雑誌を見せられたという。

 「当時、僕にタイアップがつくようなことはありません。だいぶ経って、周りからの話で知ったんですけど、雑誌社からさんまさんに話が来たんですって。『ショージさんの結婚式、特集を組もうかと思うんですが、つきましては、さんまさんと大竹しのぶさんに仲人をしてもらえませんか』と。当時、夫婦で出ることはしてなかったのに、僕のために引き受けてくださった。そして全部を決めてから、そのことは一言も言わずに『お前、ラッキーやな!』とプレゼントしてくださったんです」(ショージ)

 さらに、こちらも拙連載取材で漫才コンビ「中川家」の剛に聞いた話だが、剛はさんまから生涯忘れられない言葉をもらったという。

 デビューから5年ほど経ち、剛が心のバランスを崩してパニック障害になったことがあった。

 とても仕事ができる状態ではなかったので弟の礼二に伝えて休みをもらい、休養後、初めての仕事がさんま司会の「明石家マンション物語」(フジテレビ系、1999年~2001年)だった。

 不安でいっぱいの中、収録前に出演者やスタッフがみんな集まっている場に顔を出すと、さんまがいきなり声をかけてきた。

 「『聞いたで、パニック障害らしいな。でも、ま、しゃあないやろ。なってしもたんやから。そうや、お前“パニックマン”というコントしたらエエねん!!困ってる人を助けに行ったけど、逆にこっちがパニックになるという設定で』と。『なんちゅうことを言うんや…』という思いもありましたけど、周りとしたら僕の病気は知ってるものの、どう接していいのか迷っていた。その空気を察して“ガス抜き”をしてくれたんです。そして、本番前、僕にコソッとおっしゃいました。『緊張しててもいい。手が震えててもいい。どんな状況でもオレが必ず責任を持つ。だから、何でもエエから出て来い』と」。(剛)

 圧倒的なまでの愛。そして、やさしさという言葉では積みきれないほどのやさしさ。

 6月にはフランスで開催される「第45回アヌシー国際アニメーション映画祭」でプレミア上映もされる。“やさしさ怪獣”が生みだした作品が、世界にどれだけ沁みるのか。注目したい。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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