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1930年代の世界恐慌以来の大不況が来るのか

久保田博幸金融アナリスト
IMFのゲオルギエワ専務理事(写真:ロイター/アフロ)

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は9日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により、2020年の世界経済成長率は「大幅なマイナス」となり、1930年代の世界恐慌以来の大不況になるとの見方を示した(ロイター)。

 今回の世界的な新型コロナウイルス感染拡大を受けた株価の急落について、世界恐慌の再来ではないかとの観測まで出ていた。確かに状況は似ていた。一般には1929年の世界恐慌のきっかけとされているのは、10月に起きたニューヨーク株式市場の暴落であった。その暴落前のニューヨーク株式市場は、経済学者アーヴィング・フィッシャーが「株価は恒久的に高い高原のようなものに到達した」と発言するほど非常に高い水準を維持していたのである。

 今回のゲオルギエワ専務理事の発言は金融市場の動向というよりも、1929年の株価の急落後に起きた世界恐慌以来の大不況になるとの予想である。この世界恐慌は20世紀の中で最も長く、最も深く、最も広範な不況であったとの指摘があった。それに匹敵、もしくはそれを上回る不況が来るというのであれば、かなり深刻な事態ともいえる。

 ゲオルギエワ専務理事は今年下半期にパンデミックが終息に向かえば、2021年には部分的な経済回復が予想されるものの、「見通しに関しては途方もない不確実性がある。パンデミックの期間を含め多くの変動要因次第で、一段と悪化する可能性もある」と警鐘を鳴らした(ロイター)。

 大恐慌時にどのようなことが起きたのか。拙著「マネーの歴史(世界史編)」から該当する部分を抜き取ってみた。

 1929年6月には米国の鉱工業生産指数がピークを打ち、景気が後退局面に入っており、9月3日に米国株式市場はピークを迎えた。1929年10月24日の「暗黒の木曜日」と呼ばれたニューヨーク株式市場の急落をきっかけに発生したのが大恐慌である。

 1930年以降、大恐慌による通貨危機により金が流出し、再び金本位制が機能しなくなり、英国は1931年に金本位制を離脱した。米国からも金が流出したことに対処するため、恐慌時にもかかわらずFRBは公定歩合の引き上げを実施した。これをきっかけに金融機関の破綻が相次ぎ、金融危機が発生した。1932年にFRBは一時的に10億ドル近い政府証券の買いオペレーションを実施した。

 米国をはじめ各国で銀行の倒産が相次ぐことになる。「図説銀行の歴史」によると、1929年に営業していた25000行あまりのアメリカの銀行のうち、少なくとも1350行が1930年に閉鎖に追い込まれ、1931年にはさらに2293行が、そして1932年には1453行が破産した。米国の失業率は1929年の3.2%から1933年には24.9%に拡大し、鉱工業生産もピーク時の5割程度に落ち込むなどマイナス成長が続き、デフレが深刻化した。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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