「自分で人を採用できること」はマネジャーの要件〜次世代リーダーはリファラル採用を積極的にしている〜
■4割超の会社がリファラル採用を活用中・前向き検討
リファラル採用支援システムを提供するMyRefer(マイリファー)の調査(2021年5月。185社対象)によると、社員に人材を紹介してもらう「リファラル採用」をすでに活用している会社は19.7%、活用を検討している会社は21.3%を占めたそうです。
つまり、4割超の会社が、リファラル採用の取り組みをすでに始めていたり、前向きになったりしているということ。テレワークなどの影響で社内の絆が薄まる前にリファラル採用に取り組むべき、という記事を以前書きましたが、「すでに絆ができている人」を会社が採用するメリットは小さくありません。
■リファラル入社の社員が新しい事業を作る例も
オンラインでの人材の見極めが難しい、求人広告や人材エージェントで人が集まらない、といった課題を抱えていた会社が、リファラル採用で成果を上げています。
その一方で、「活用を考えていない」会社は22.9%、「分からない」会社も36.2%あります。経営者や人事担当者の中には、リファラル採用は「大手しか通用しない」「人気がある会社でないとできない」といった捉え方をしている人もいるようです。
しかし、多くの会社でリファラル採用の導入をお手伝いしてきた身からあえて断言しますと、リファラル採用は「どんな会社でも可能」です。中小企業だからできない、社内に人脈がある人がいないからできない、ということはありません。
例えば、関西地方のある中堅不動産会社(社員数約200名)は、すべての採用をリファラルに切り替え、いまでは社員の3分の1超をリファラル採用者が占めています。これまで採れなかった人材も採れるようになり、リファラルで入社してきた人が新しい事業を作り、会社も変わっていくという好循環をもたらしています。
■できない会社は「当然やるべきこと」をしていないだけ
ただし、リファラル採用の導入を試みたものの、うまくいかなかったという悩みも聞きます。Googleで「リファラル」を検索すると、関連キーワードに「失敗」「トラブル」「気まずい」などが出てきて、担当者が苦心する様子がうかがえます。
とはいえ、うまくいっていない会社のお話を伺うと、「当然やるべきこと」をしていない会社がほとんどです。例えば、具体的な取り組みといえば「こういう採用案件の適任者を知っていたら紹介してください」と社内一斉メールを送信するくらい、という会社がありますが、これでは成功の見込みは低いです。
知人や友人を会社に紹介することは、社員にとって重荷ともいえます。面接を受けた人が不合格になることもあれば、紹介した人から文句を言われて人間関係に傷がつくリスクもあります。軽く「紹介してね」だけで、人が動くわけがありません。
個々の社員に、自社の採用や人手不足の現状を説明し、あらかじめ「自社の魅力の伝え方」をレクチャーする必要があります。また「このイベントに人を連れてきて」ではなく、「案内をさせて欲しいので許可を取って」という依頼にして負荷を軽くする。こうしてようやく、社員が人を紹介してくれるようになるのです。
■会社は「社員による紹介」をしてくれる人を重用すべき
冒頭のMyReferの調査によれば、リファラル採用実施会社のうち、「社員にインセンティブ(報奨金)を渡す」会社が42.9%、「人事評価制度に入れる」会社が32.5%、そもそも「マネジメント(層として)の要件に入れる」会社が24.7%もあるそうです。
リファラル採用をうまく活用できている会社は、「人を紹介すること」に対して社員にきちんと報いているわけです。会社に人を紹介できる人は、会社に忠誠心や愛着があり、人的ネットワークを有し、人を惹きつける魅力もあります。厚遇すべき次世代リーダー候補人材に、積極的に報いることは道理にかなっています。
実際、MyRefer社による別の調査では、リファラル採用をするビジネスパーソンは、当事者意識が高く、役職も年収も高い活躍人材であることもわかっています。偉くなる人がリファラル採用をする人なのか、リファラル採用をするような人だから偉くなるのかはわかりませんが、いずれにせよ、強い相関はありそうです。次世代リーダーは自分で採用できる人でなくてはならないということです。
さて、このようにオンライン時代に必要なリファラル採用は、細やかに、しかしやればできることを粛々と行えば、どの会社でも取り組みが可能です。拙著『「ネットワーク採用」とは何か』には、すべきことをかなり具体的に書いていますので、よろしければご参照ください。
最近では冒頭のMyReferのように、リファラル採用の社内推進を支援するシステムも登場しています。案件ごとにリクルーター対象社員を選び、SNSと連携して求人情報を提供したり動機づけを行ったりすることで、関係者の負担を軽くできます。このようなサービスを利用することで、細かな工夫を社内に浸透させることが可能です。
※キャリコネニュースにて、人と組織に関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。