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年初からブラックスワンが続いて出てきた金融市場、今年はどうなるのやら

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 2020年の金融市場動向の予測がいきなり崩されるような出来事が次々と発生した。

 米中の通商交渉については第一弾の合意に至り、これ以上の貿易合戦の悪化は避けられる見通しとなった。また、英国の総選挙で与党保守党が勝利し、英国のEU離脱に向けた道筋が見えてきた。この2つの大きなリスクが後退し、市場でのリスクを意識した動きは、2020年に入ると後退するかに思えた。

 ところが、2020年の金融市場は波乱の幕開けとなったのである。年末にかけて中東や北朝鮮情勢がややきな臭くなっていたが、年初にあらたな展開が待っていた。米国防総省は2日、イラン革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害したと発表した。これを受けてイランと米国の対立姿勢が強まり中東の地政学的リスクが高まった。

 これに対してイラン側からはイラクの駐留米軍基地に十数発以上の弾道ミサイルを発射した。しかし、この反撃は人的被害を極力抑えようとしたものであり、イランと米国の直接の軍事衝突は避けられた。

 これでひと安心と思っていた矢先に、今度は中国で新型のコロナウイルスによる肺炎が発生したのである。それが国内にとどまらず、米国や日本を含めて海外にも拡大してきた。中国国務院は、春節休暇を当初の1月30日までだったものを、2月2日まで延長すると発表した。春節休暇は学校の休暇も追って通知があるまで延長される。これによる中国発のサプライチェーン(供給網)に影響するとの見方も出てきた。

 航空会社、さらには旅行会社、そしてカジノに関係する会社の株も下落するなどしていたが、たしかに春節の需要を見越していたところには大きな影響を与えることが予想され、これは日本のいわゆるインバウンドへの影響なども懸念される。

 しかし、それ以上に中国は世界の工場の役割を担っている面もあり、今回の新型肺炎の影響が長引くと、日本を含めて自動車や電機などの製造業への影響も危惧される。新型スマートフォンの製造などにも影響が及ぶとIT企業にも当然ながら大きな影響を与えよう。

 さらに新型肺炎が日本でも拡大し、それが長期化するようなことになると、7月24日に開催される東京オリンピックにも影響が及ぶ可能性もありうる。

 今年は少しは落ち着いた年になるかと思っていたが、1月からいきなり大きなショックが飛び込んできた。市場では立て続けにブラックスワンが出てきたことになる。どうやら今年は波乱の一年となるのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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