近年、ChatGPTに代表される大規模言語モデル（LLM）が注目を集めています。LLMとは、膨大なテキストデータから言語の理解と生成を学習したAIモデルのことです。この革新的な技術は、医療分野にも大きな影響を与えつつあります。

今回、Meng氏らのグループが行った網羅的なレビュー研究では、LLMの医療応用に関する550本もの論文が分析されました。その結果、LLMが診断支援、医療文書作成、医学教育など、医療の様々な場面でパラダイムシフトを起こしつつあることが明らかになりました。

【LLMが変革する医療の現場】

レビューによると、LLMは特に診断支援の分野で大きな可能性を秘めているようです。膨大な医療データを学習したLLMは、患者の症状や検査結果から高い精度で診断を補助することができます。また、医療文書の作成や要約、患者向けの説明資料の生成など、煩雑な事務作業の自動化にも威力を発揮できます。

医学教育の分野でも、LLMは学習効率の向上に寄与すると期待されています。臨床現場を模したシミュレーションや、学習者に合わせた問題の生成などが可能です。

さらに、LLMは医療従事者と患者のコミュニケーションを円滑にする役割も果たします。専門用語を平易な言葉に置き換えたり、患者の理解度に合わせて説明を調整したりと、LLMならではの応用が考えられます。

【LLM医療応用の研究動向】

Meng氏らがレビューした550本の研究は、2021年5月から2023年7月までの期間に公開されたものです。研究数は2023年に入って急増しており、5月には126本を数えたとのこと。これは、LLMへの関心の高まりを反映していると言えるでしょう。

研究の内容を見ると、診断支援や医療文書作成への応用が最も多く、次いで医学教育やプロジェクト管理への活用が目立っていました。対象となる医療分野は多岐にわたりますが、泌尿器科、消化器科、循環器科などで盛んに研究が行われている傾向があります。

地域別では、米国が221本と最多で、次いでインド（53本）、中国（49本）と続くそうです。残念ながら、日本からの発信は比較的少ない印象です。

【LLM医療応用の課題と展望】

医療とAIの融合は、私たち一人一人の健康と幸福に直結する、まさに未来を左右する重要なテーマです。Meng氏らの網羅的なレビューは、大規模言語モデル（LLM）という革新的な技術が、医療現場に大きな変革をもたらす可能性を秘めていることを示唆しています。

診断支援、医療文書作成、医学教育など、LLMの応用範囲は実に広範です。今後、医療従事者とAI研究者が力を合わせ、LLMの性能を高めていくことで、より効率的で質の高い医療が実現されるかもしれません。

もちろん、倫理的・法的な課題への対処も欠かせません。しかし、そうした課題を一つ一つクリアしながら、LLMの可能性を追求していくことこそが、私たちに求められていると言えるでしょう。

Meng氏らのレビューを通じて見えてきたLLMの現状と未来。この先、医療分野ではどのような革新が起こるのか。AIとの共生が私たちの健康にどんな影響を与えるのか。LLMの研究動向に注目しつつ、医療の未来を見守っていきたいと思います。

参考文献:

Meng X, et al. The application of large language models in medicine: A scoping review. iScience. 2024;27:109713. doi:10.1016/j.isci.2024.109713