米国から見た一般の日米協力・相互理解関係の推移をさぐる
・全般的な日米協力関係への評価は一般人62%、有識者58%。
・日米両国民の相互理解度は一般人43%、有識者33%。
・評価、相互理解度ともに大よそ年々上昇する傾向だが、直近年度は有識者で下落傾向が。米現政権への姿勢が影響か。
日米の協力関係に関して米国の人達はどのような認識をしているだろうか。その実情を外務省が2017年12月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。
まずは日米の協力関係において、軍事や政治などに限定せず、一般的にどのような評価を下しているかとの質問。「極めて良好」「良好」「普通」「よくない」「意見無し」のうち、ポジティブな意見である「極めて良好」「良好」双方を足した値の推移をグラフ化したのが次の図。有識者は1992年度から質問を設定しているため、答えもそれ以降のものとなっている。
有識者の方が大よそ一般人の10から20%ポイントの上乗せをしていたが、上昇の仕方は双方で変わりが無い。有識者の計測を始めた1992年度以降、一貫して上昇傾向を見せていた。一般的な協力関係については良好であるとの認識を持っていると考えてよかった。
ところが2013年度になると、一般人では前年度から22%ポイントと大きな下落が確認できる。有識者では2014年度に同じような動きが生じている。詳細を見るに、その分「普通」の回答者が増えているのだが、この一年で日米協力関係に劇的なマイナス要因となる事態が起きたとも思えず、また仮に震災関連の反動だとしても、その勢いが大きすぎる。実のところ2013年度から調査会社が変わっており、その影響を受けた可能性が高い。
2014年度以降はいくぶん持ち直しは見せたものの(その分「普通」が減っており、「よくない」「意見無し」は前年からさほど変化は無い)、2007年度前後の水準にまで逆戻りをしてしまっている。
直近年度では一般人の値は前年度から変わらずだったものの、有識者の値が大きく落ち込み、初めて一般人の値を下回る結果となった。今回調査のいくつかの項目で見られるが、有識者にとって現トランプ大統領の治世における、日本との関係がよくは見えない、思わないとする意識があるようだ。
一方、国全体も含めた包括的なものでは無く、国民の視線に降りた形で、両国国民における相互理解度をどのように認識しているかを聞いたのが次のグラフ。「普通」との回答が多いこともあり、「よく理解し合っている」の割合は先の「協力関係一般」と比べれば低い。
こちらも1990年代前半以降漸増傾向に違いは無い。そして2013年度以降の減少傾向も、「協力関係一般」と同じ流れ。直近年度では一般人と有識者で相反する動きを示し、一般人は過去最高値(2010年度、2012年度と同じ)を示したのに対し、有識者では前年度比で5%ポイントもの下落を示している。一般人が好意的になり、有識者がさめた考えを持つ傾向も「協力関係一般」と同様で、現トランプ大統領の治世への思惑の違いが透けて見える。
今件はあくまでも日本全体・包括的な日本そのものについて言及していることに注意する必要がある。他の項目では一部影響が及んでいるのも確認できるが(例えばある項目では、2008年度のアメリカ合衆国大統領選挙前後に、日本への傾注度が落ちている動きが確認できる)、少なくとも今項目では各調査時期の両国の政権政党や基本政策は、影響を与えていないと見てよい。ただし直近年度ではそうとも言い難い動きを示しているのも否定できまい。
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※米国における対日世論調査
外務省がニールセン(Nielsen)社に委託し、米国内において電話により2017年3月に実施されたもので、有効回答数は一般人1005人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。