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今日開幕するヨーロッパの代表チームの新大会「ネーションズリーグ」って何?

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

いきなりW杯優勝国フランスが強豪ドイツと激突

 ワールドカップ閉幕から約2ヵ月が経過する中、今日9月6日からヨーロッパでは代表チームによる新しい公式大会が開幕する。

 その大会とは、ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)に加盟する55協会の代表チームが参加する「UEFAネーションズリーグ(UEFA Nations League)」。簡単に言えば、ヨーロッパの代表チームによるリーグ戦を2年ごとに開催し、チャンピオンを決定するという大会だ。

 これまでヨーロッパでは4年おきにユーロ(欧州選手権)を開催して代表チームのチャンピオンを決定していたが、ネーションズリーグはユーロのような集中開催型のトーナメントではなく、あくまでもホーム&アウェイを基本にしたリーグ戦。代表チームによる日常的なリーグ戦を、2年ごとに開催するというイメージだ。

 さっそく開幕初日の9月6日にはワールドカップ優勝チームのフランスがアウェイ(ミュンヘン)でドイツと対戦し、8日にはイングランドとスペインが対戦するなど、世界中のサッカーファン、メディアから大きな注目を集めている。

 そもそもヨーロッパでこのような大会が創設されるきっかけとなったのは、ヨーロッパの代表チームが親善試合を行うことの意味合いが薄れてきたという背景がある。チャンピオンズリーグや国内リーグ戦など、日常的にクラブレベルの大会で質の高い試合が増え続ける中、ワールドカップ予選やユーロ予選は別として、もはや選手たちが高いモチベーションで親善試合に臨めなくなっているのが実情なのだ。

 とはいえ、代表チームの強化という観点に立てば、親善試合を行わずにワールドカップ予選やユーロ予選で、いわば“ぶっつけ本番”的に試合を行うだけでは本当の強化はままならない。そこで、2011年からUEFA内で何度も協議を重ねてきた代表チームの新しい大会の創設が2014年にまとまり、今回の開幕に至ったというわけだ。

 しかも、さすがチャンピオンズリーグを世界最高峰の大会にしたUEFAが考案した大会だけに、大会の質を高め、また各チームがモチベーション高く臨めるような工夫がいくつも施されている。

各リーグに昇降格があり、ユーロ予選にもリンク

 まず、この大会に参加する55チームをUEFAナショナルチームのランキング(2017年11月時点)によって、4カテゴリーに分類。上位12チームを「リーグA」とし、13位以下の12チームを「リーグB」、以下、15チームを「リーグC」、下位16チームを「リーグD」と、国内リーグ戦の1部~4部リーグをイメージした4つのリーグを編成。そして各リーグを抽選によって4つのグループに分け、それぞれのグループ内でホーム&アウェイで試合を行い、最終順位を決定するというレギュレーションだ(グループ分けは下記参照)。

 たとえば、強豪がひしめくリーグA(1部リーグ)は、A1~A4のグループに各3チームが組み込まれ、9月から11月のインターナショナルマッチウィークに試合を行い、各チームは6つのマッチデイの中で4試合を戦うことでリーグ戦の日程を消化。つまり残り2つのマッチデイには、従来通り他大陸の代表チームと親善試合を行うことも可能な日程的工夫がなされている。

 さらに、各リーグでグループ首位となったチームは上位リーグに昇格し、たとえばリーグBの各グループ首位4チームは次のシーズンのネーションズリーグではリーグAに参戦することができる。逆に、各グループ最下位4チームは下位リーグへ降格となり、たとえば今シーズンのリーグAの各グループ最下位となった4チームは、2020-2021シーズンはリーグBで戦うことを強いられるのだ。

 つまり各リーグには昇格と降格があるため、各チームは国内リーグ戦のような緊張感を持続することができるというわけだ(リーグAの昇格とリーグDの降格はない)。

 そして、トップリーグの「リーグA」だけは、各グループの首位4チームが翌年の6月に決勝トーナメント「ネーションズリーグ・ファイナル」を行い、そのシーズンのチャンピオンを決定する。ちなみに準決勝は6月5日と6日、3位決定戦と決勝戦が、6月9日に行われる(開催地は2018年12月に決定)。

 また、ネーションズリーグが代表チームにとって重要な大会となるもうひとつの理由は、この大会の成績がユーロ予選に大きな影響を与える仕組みになっているからだ。

 具体的に言うと、各リーグのグループ首位となった計16チームには、もし次のユーロ予選でグループリーグ突破ができなかった場合でも、本大会出場のためのプレーオフトーナメントに出場する権利が与えられることになっているのだ。要するに、ユーロ予選の保険的な意味合いをプラスすることで、ネーションズリーグの価値を高めようという狙いだ。

 これに伴ってユーロ予選プレーオフのレギュレーションも大きく変更されたため、たとえばネーションズリーグの最弱とされる「リーグD」の中からユーロ2020本大会に出場するチームが必ず生まれることになった。確かにユーロ本大会の質の低下につながる可能性は否めないが、これまで大会出場が困難とされていた「リーグD」に属する代表チームにとっては画期的なレギュレーションであり、大きなモチベーションとなることは間違いないだろう。

 いずれにしても、強豪がひしめくヨーロッパの代表チームが、さらにお互い切磋琢磨する機会を新たに与えたネーションズリーグの創設は、サッカーファンにとっては見逃せない重要なコンテンツとなることは必至だ。

 他大陸の代表チームにとってはますます強化が難しくなることは間違いないが、この大会が今後のサッカー界に与える影響も含めて、我々日本人のサッカーファンも大きな関心を持って注目する必要がありそうだ。

2018-2019シーズン各リーグのグループ分け

≪リーグA≫

A1グループ;ドイツ、フランス、オランダ

A2グループ;ベルギー、スイス、アイスランド

A3グループ;ポルトガル、イタリア、ポーランド

A4グループ;スペイン、イングランド、クロアチア

≪リーグB≫

B1グループ;スロバキア、ウクライナ、チェコ

B2グループ;ロシア、スウェーデン、トルコ

B3グループ;オーストリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北アイルランド

B4グループ;ウェールズ、アイルランド、デンマーク

≪リーグC≫

C1グループ;スコットランド、アルバニア、イスラエル

C2グループ;ハンガリー、ギリシャ、フィンランド、エストニア

C3グループ;スロベニア、ノルウェー、ブルガリア、キプロス

C4グループ;ルーマニア、セルビア、モンテネグロ、リトアニア

≪リーグD≫

D1グループ;ジョージア、ラトビア、カザフスタン、アンドラ

D2グループ;ベラルーシ、ルクセンブルク、モルドバ、サンマリノ

D3グループ;アゼルバイジャン、フェロー諸島、マルタ、コソボ

D4グループ;マケドニア、アルメニア、リヒテンシュタイン、ジブラルタル

2018-2019・リーグ戦の試合日程

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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