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FRBは金融政策の現状維持を決定、今後の動向は市場のリスク感応度次第か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 1月29日のFOMCでは、政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年1.50~1.75%で維持することを全会一致で決めた。

 そして、銀行の超過準備に適用する付利(IOER)を1.60%と5ベーシスポイント引き上げた。これは短期金融市場の需給が逼迫したことを受けて、短期国債やシステムレポの実施を行ったものの、上昇は抑制されたが、やや下がりすぎて、FF金利のレンジの下振れを抑制する為の措置とされる。

 声明では、個人消費の伸びについて、力強いペースから穏やかなペースに修正したが、大きな修正はなかった。声明では、中国の新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が及ぼす経済的なリスクについては特に言及はなかった。

 会合後の会見でパウエル議長は、貿易における不確実性は最近いくらか減ったものの、新型コロナウイルスによる肺炎など先行きの不透明さは存在すると発言していた。中国経済への影響は明白としつつも、米経済見通しや世界への影響を見極めるには時期尚早として、状況を注視していると述べた。

 このタイミングで、今回の新型コロナウイルスによる肺炎拡大による世界経済への影響を見極めるのはたしかに難しい。しかし、中国国内での企業の活動が抑制されていることも確かであり、これが長引けば中国発の世界のサプライチェーン(供給網)に影響が出る可能性がある。

 FRBは今回も前回同様に現状維持を決めた。これにより昨年の利下げはあくまで予防的なものであり、金融政策の姿勢は中立に戻した格好となった。今年に入り、中東情勢の悪化や今回の中国の新型肺炎など、いわゆるブラックスワンが現れてはいるが、金融政策の修正が必要なほどリスクが大きくなっているわけでは、いまのところない。

 しかし、昨年もそうであったが、物価や景気動向よりも市場でのリスク感応度の大きさが中央銀行の金融政策に影響を与えていることもたしかであり、市場でのリスク感応度が再び高まるような事態となれば、中央銀行の政策変更の可能性も出てくることも確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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