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「以前のスタミナはない。すっかり年を取った」辛くも予選通過のウッズは、これからどうなる?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
上がり3ホールの「バーディー、バーディー、パーが唯一のポジティブ」と言ったウッズ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5か月ぶりの試合出場ながら、過去5勝を挙げたメモリアル・トーナメントゆえ、いきなり優勝だって、ありえるのではないか。ラスベガスのブックメーカー、ウイリアムズヒルズが付けた優勝予想のオッズは22倍。

 そんな期待を寄せられているタイガー・ウッズが、カットラインぎりぎりで辛くも予選を通過した。初日は1アンダー、71で回り、18位タイの好発進。しかし2日目は3バーディー、5ボギー、1ダブルボギーの4オーバー、76とスコアを崩した。

 通算3オーバー、64位タイ。ホールアウト時点では予選通過が危ぶまれ、他選手の動向を祈りながら見守るような状況だった。

「まったくいいところが無かった。上がり3ホールをバーディー、バーディー、パーで回ったことだけが唯一のポジティブ。明日もプレーしたい。カットラインが下がってくれれば、そのチャンスはあるんだけど、、、、」

 そうやって他力本願の予選通過を願うウッズは、黄金期のウッズとは、まるで別人のように感じられる。

【「今朝から、おかしくなった】

 初日は好プレーを見せたのに、なぜ2日目は一転して乱れたのか。直接的な原因は、腰に由来する体全体の違和感だった。

「今朝、ウォーミングアップの段階から、おかしくなった」

 

 体全体が硬く重く、違和感を感じたというウッズは、10番からティオフしたものの、フルスイングはほとんどできず、フィニッシュを取れないこともしばしばで、歩き方さえ、ぎこちなかった。

 12番でバーディーを先行させたが、13番、15番、17番でボギーを喫し、折り返し後の1番はダブルボギー、2番、6番はボギーを叩いた。フェアウエイを捉えたのは、わずか5回。熟知しているはずのグリーンを捉えたのは10回にとどまり、3パットを2回も喫した。

 生涯で4度の手術を受けてきた腰と5度の手術を受けてきた左ひざは、リハビリを経て回復していたからこそ、昨秋には日本で開催されたZOZOチャンピオンシップを制し、歴史に並ぶ通算82勝目を挙げることができたのだが、腰も膝も永遠の完治ではないことは言うまでもない。

 実際、今年2月には、ウッズ自身が大会ホストを務めたジェネシス招待で、腰痛を発症し、最下位に終わった。

 以後、試合にはエントリーせず、腰の回復に努めていた。その矢先の3月半ば、コロナ禍でツアーが休止されたため、6月11日からの再開後も5試合をスキップ。そして今週、6試合目のメモリアル・トーナメントで151日ぶりの試合を迎えているのだが、腰の状態は、またしても悪化している様子だ。

【「僕はすっかり年を取った」】

 だが、ウッズの不調をもたらした根本的な要因は、どうやら腰の違和感ではないらしい。無観客試合ゆえに、大観衆の拍手喝采が得られないことから来る違和感は、その1つだ。

「僕はデビューしたときから、一挙手一投足のすべてにカメラを向けられてきた。大勢のファンに囲まれた中でプレーしてきた」

 大観衆と無観客。その最大のギャップを感じている選手がウッズであることは疑いようもない。

 一昨年の秋にツアー選手権を制したときも、昨春にマスターズを制したときも「大観衆の拍手と歓声が僕のエネルギーになった」と言っていた。それらが感じられない今、ウッズは、ある種のエネルギーに枯渇している。

 しかし、それ以上に直面している現実は、44歳という年齢だとウッズは言った。

「以前と同じスタミナは無い。トレーニングやランニングをしているとき、それは確実に感じ取れる。僕はすっかり年を取った。モノゴトはどうしても変化していく。エネルギーを吸い上げようと努力はしているけどね」

 苦しい胸の内をそう明かしたウッズは、さらに言葉を続けた。

「キャリアの初期は良くなるばかりでファンタスティックだった。今は食い止めようとするばかりだ」

落胆と悲嘆に暮れるウッズには悲哀が漂った。

 しかし、これで終わりではないはずだ。以前のウッズは「無敵」だったが、腰を痛め、年齢を感じ始めてからのウッズは、どん底から蘇る「不死鳥」が代名詞になっている。

 4度目の腰の出術後の激痛からの復活。逮捕劇からの復活。戦線復帰後、ツアー選手権での復活優勝、マスターズ優勝、そしてZOZOチャンピオンシップ優勝。すべては、ありえないほどの大復活劇だった。

 今週のメモリアル・トーナメントでも、ぎりぎり予選通過から、どこまで蘇ることができるか。首位とは12打差。大きな差だからこそ、不死鳥の起死回生に期待したい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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