総売上1兆3426億円、直近では文芸が売上増…出版物の分類別売上推移(2024年版)
シェア動向では雑誌は落ち、コミックは上がる
インターネットの普及とともに出版物の販売状況は大きな変化の中にある。しかし雑誌もコミックも一様に同じ変化を示しているわけではない。その実情を日販の「出版物販売額の実態」最新版(2024年版)を基に確認する。
「出版物販売額の実態」には主要分類別の売上高構成比と、総売上が記載されている。そこでこの2項目を掛け合わせれば、概算による推計値ではあるが分類別の売上高が算出できる(分類別売上構成は1月から12月の暦年、総売上高は4月から翌年3月までの年度での値のため、3か月のずれが生じることになるが、ここは妥協する)。
一方出版物の分類においては、「出版物販売額の実態」では過去2回変更が行われており、これを放置すると計算が非常に複雑なものとなる。そこで変更対象となった「学参」「辞典」「実用」「旅行地図」「専門」「ビジネス」はすべて「その他」扱いとし、変更とは無関係の「雑誌」「コミック」「文庫」「新書」「児童書」「文芸」のみ今回の精査対象とする。
各分類の各年の売上、そして総売上に対する構成比の推移を算出した結果が次のグラフ。
出版物の総売上が減少傾向にあるのはすでに先行記事で解説した通りだが、その過程で少しずつ分類毎の構成比に変化が生じているのも確認できる。手元のデータで一番古い2000年から最新の2023年に至る構成比の変化を見ると、増えたのは「コミック」「文庫」「児童書」。一方、「雑誌」「新書」「文芸」「その他」は値を減らしている。
総額そのものも落ちていることから、構成比が減った「雑誌」「新書」「文芸」「その他」はもちろんだが、構成比上では増えた分類の「コミック」「文庫」も売上そのものは減少してしまっている。売上そのものにおいて一番大きな減少を示しているのは「雑誌」で、2006年比では実に6割強を減らしている。他方「コミック」は根強いファンがいるためか、あるいは定価が漸次引き上げられている影響もあるのか、ヒット作にけん引される部分もあり、減少率は2割強で済んでいる。
唯一セールスを伸ばす児童書
構成比動向で目にとまるのは「児童書」。総売上に対する構成比は大きくないものの、わずかながらも構成比・売上ともに増加しているようすがうかがえる。
実際、2006年から2023年の売上の変化を算出すると、唯一プラスの値を示していることが分かる。
「児童書」の2023年における売上は推計で953億円、総売上に占める構成比は7.1%。しかし唯一伸びを示している分類として、注目に値する。
元々一定量の需要は常に存在する児童書だが、ひそかに需要、そして供給ともに増加を示している。この事実(少なくとも売上の面で)は、注目すべき動きに違いない。
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(C)日販 ストアソリューション課「出版物販売額の実態2023」
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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