米ミネアポリス事故の再来、イタリアで橋梁崩壊ー日本は老朽化対策が急務
複数のメディアによると、イタリア北部ジェノバで14日、高架高速道路が約100メートルにわたり突然崩落する事故が発生した。高架橋は1960年代に建設されたもので、2年前に改修工事が行われているという。ジェノバでは数日前から大雨が続いており、地盤が緩んでいた可能性も指摘されている。
このニュースを見て最初に思い浮かべたのが、2007年8月1日に米ミネソタ州で発生したミネアポリス高速道路崩落事故だ。ミネソタ州の州都セントポールとミネアポリスの間を流れるミシシッピ川に架かっていた高速道路が真夏の夕方のラッシュアワーに突然崩落し、13人が死亡し、150人近いけが人を出した。
この事故では、国内でも橋梁の安全基準や点検のあり方が問題となり、その後の調査で、多くの市町村で橋梁の点検すら行われていないことが判明した。ちなみに、国交省の調査によると、平成28年時点でも、地方公共団体の橋梁点検要領は、遠望目視による点検が約8割を占めているという。
こうした不安を抱えたまま2012年12月2日には、山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで天井板のコンクリート板が約130m の区間にわたって落下し、走行中の車複数台が巻き込まれて9名が死亡する悲惨な事故が起き、社会インフラへの不安が一気に高まり、社会的問題に発展した。
しかし、その根本原因は今なお解決されず先送りされたままだ。
国交省によれば、全国約73万ある橋梁のうち、7割以上となる約52万橋が市町村道にあり、建設後50年を経過した橋梁の割合は、2017年時点で23%なのが2027年には48%にまで増加するという。このほかに23万橋については建設時期すら不明だという。さらに、町の約3割、村の約6割では、橋梁保全業務に携わっている土木技術者すら存在しない。
これまでも繰り返し指摘されてきたことだが、高度成長期に一気に建設されたインフラの多くが、今一斉に老朽化し、修復や改築が求められている。一方、公共事業費の削減などにより、工事は思うように進んでおらず、市町村が管理する橋梁では、通行止めや車両重量等の通行規制が約2000カ所に及んでいるという調査結果も出ている。
今回のイタリアの橋梁の事故は、まだ原因が特定されておらず、老朽化や財源の問題とは直接結びつかないかもしれないが、少なくても、自治体は公共インフラの長寿命化計画を早期に策定し、緊急措置が必要な構造物の把握と応急補修などを急ぐ必要がある。
また、こうした事前対策のみならず、想定外の事態による崩壊なども想定し、危機管理部門が中心となり、消防や警察、病院、隣接する自治体らとの連携が取れる体制を構築していく必要がある。自治体の境界を流れる河川では、橋梁事故などの場合、どちらの自治体が主体となって対応するのかが問題になりやすい。米ミネアポリスの事故では、州、市の消防、警察、防災担当、医療機関らが、平時か訓練・演習などを通じて緊急時の連携力を高めており、それにより被害が最小化できたことも忘れてはならない。
今回のイタリアの事故についても、その原因だけに注目するのではなく、事故後の対応などについてもしっかり検証し、対策に生かしていくことが求められる。