発災から1週間 支援者・若年者同士のインフルエンザ感染に警戒 報道陣はマスク着用を
「令和6年能登半島地震」発災から1週間が経過しました。被災地である石川県では手指衛生を講じることが難しい上、避難所でクラスターが発生しやすいため注意が必要です。東日本大震災における感染症の流行から学ぶことはあるでしょうか?
石川県のインフル・新型コロナ患者数
石川県における定点医療機関あたりのインフルエンザおよび新型コロナの患者数は図1の通りとなっています。現在インフルエンザのほうが新型コロナよりも流行しており、インフルエンザは落ち着きつつあります。それでも定点医療機関あたり10人をゆうに超える「注意報」の状態が続いています。
震度7を観測した志賀町、震度6を観測した七尾市、能登中部では、定点医療機関あたりのインフルエンザ患者数は30人を超えており、こちらは「警報」の状態で被災しています。
おおむね発災から1~2週間でウイルス感染症が流行します。東日本大震災では、インフルエンザの流行は発災から12日後にピークを迎えています(図2)。
普段とは異なる生活が続き、体調をくずしてしまう人も多いことから、避難所でのクラスター発生が今後続く可能性があります。
また、足元で新型コロナの感染者数がじわじわと増えていることも気がかりです。
捜索・救助活動に従事する若年者の感染に注意
東日本大震災におけるインフルエンザ感染例の多くは、捜索・救助活動に従事していた可能性が高い15~64歳で発生しています。
これまでの検討で、震災後の流行は以下のようなパターンが想定されます(3,4)(図3)。発災後1週間程度までは、寒い避難所での生活やストレスなどによって急性感染症が発生します。その後、支援者など外部の人との接触機会が多い成人男性がまず感染し、その後避難所内に感染が広がっていきます。避難所のクラスターは、身を寄せ合っている家族内事例がほとんどです。
現在、現地で積極的に活動している人たちの感染対策を強化すること、そして外部から支援者ができるだけウイルスを持ち込まないことが重要になります。
また、外部から支援や報道のために現地入りしている人は、特に避難所ではマスク着用などの最低限の感染対策が重要になります。映像として流れるので、報道陣のマスク着用は啓発の意味も含めて必須と考えます。
まとめ
平時であれば、マスクや手洗い・アルコール消毒などの感染対策を講じることができますが、水や物資が不足している有事ではそれは難しいかもしれません。
体調が悪くても「こんな状況だから・・・」ということで、周囲に症状を伝えずに我慢してしまう人が多くなりがちです。医療支援が入っている地域も増えてきたので、不安な症状があれば伝えるようにしましょう。
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00438.html)
(2) インフルエンザに関する報道発表資料 2023/2024シーズン(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00014.html)
(3) Kamigaki T, et al. BMC Public Health. 2014 Jan 14:14:34.
(4) 押谷仁, 他. 保健医療科学. 2013; 62(4): 364-373.