日本の軍事費の対政府支出比率は世界で何番目なのか
日本の軍事費の対政府支出比率は世界で116位
日本の軍事費に相当する防衛費が、世界ではどのあたりに位置するのか多方面で論議が挙がっている。今回は国際的な軍事研究機関であるストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の公開データを元に、その実情を確認する。
そのデータによれば米ドル換算をした上で軍事費(相当額)(※)を比較した結果、上位陣は次の通り。アメリカか合衆国がトップで、次いで中国、ロシア、サウジアラビアの順。日本は8位。
それではそれぞれの国の政府支出総額に占める軍事費はどれほどなのだろうか。要は軍事費の予算的バランスを検証しようというものだが、SIPRIが直近年となる2016年分について、政府支出総額と軍事費を把握しているのは146か国。それらの国について実情をグラフ化したのが次の図。日本の部分は赤く着色している。
トップはオマーンの29.6%、次いでサウジアラビアの27.6%、スーダンの24.7%が続く。最近中東方面で話題に上ることが多いイランは17.7%。シンガポールも17.3%とイメージできないような高値を示す。
日本はといえば2.6%で、これらの国の中では116位。近しい値としてはドイツの2.7%かカナダの2.4%などが目に留まる。少なくとも一部でイメージされている「日本の軍事費は政府予算(=支出)のかなりの部分を占めており、その比率は世界でも上位だ」というお話は、正確ではない。
日本の軍事費の対GDP比率は世界で111位
同様に対GDP(※※)比についても計算を行う。該当国は148か国。
GDPと政府支出総額の関係はどの国でも似通っており、結果として軍事費の対GDP比の順位動向は、対政府支出総額比と大きな違いは生じない。トップはオマーンの16.7%、サウジアラビアの10.4%が続いている。コンゴ、アルジェリア、クウェートが続いており、その次にイスラエル、そしてロシア連邦が入る。
日本はといえば1.0%で111位。カナダやスウェーデン、チェコなどがほぼ同じ値。
実のところ軍事費は周辺環境の違いにより、必要とされる額は大きく異なってくるので、額面はあくまでも指標の一つでしかない。日本の場合は軍事費最上位の国が同盟国ではあるが、2位と3位の国がどちらかといえば敵性状態にあり、国境を接している実情ではある。そのような環境下で現状の額面が適正か否か、考える必要があるのは間違いない。
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※軍事費相当額
SIPRIが軍事費であると認識した額で、主に対外勢力に対抗する物理的国家軍事組織に対する執行予算。日本ならば防衛費に相当する額面。なお日本に関しては防衛費にSACO(沖縄に関する特別行動委員会)の関係費を加えた額を相当額としている。また国名に「*」があるのはSIPRIによる推定値。本文では軍事費で通しているが、自衛隊は軍隊とは自称しておらず性質も異なるため、厳密には軍事費では無い。ただし海外では軍事費と同等として取り扱われている。
※※GDP
国内総生産。Gross Domestic Product。国内で生み出された付加価値総額。自国の外に住む自国民は対象に含まれない。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。