【岡崎市】日本で最も歴史のある和ろうそく店。暖かく揺らめく灯りの体験。300余年の歴史を守りたい。
岡崎市担当の岡子です。
今回は、磯部ろうそく店の体験・見学会をご紹介します。
和ろうそく店は、現在では全国に20軒ほどが残るのみなんだそうです。
場所は、八幡町。お店の前の道路は細い一方通行になっています。
駐車場は店舗前に3台分あります。
2012年2月に新店舗をオープンされているので建物は新しいのですが、磯部ろうそく店は、伝統技術を守り続けて300余年、日本で最も長い歴史を持つ和ろうそく店なんです。
そうなんです。この岡崎の地に、こんなに歴史のある和ろうそく店が存在しているのです。
岡崎は、家康公のおかげで、京都・奈良よりお寺が多いと言われています。信仰心の厚い土地であるこそ、和ろうそくは必要とされ続けているのです。
半月前に、和ろうそくの体験・見学を電話で申し込みました。
女将による和ろうそくの話、灯火の体験、製造の作業風景の見学は、大変人気なので予約が必須です。平日の13時に友人と2人で訪れました。
店内には、普段目にすることのないような大きな和ろうそくが置いてあります。
かわいらしい絵の付いたろうそく。贈り物に喜ばれそう。
地下「燈庵」にて、和ろうそくの歴史や魅力についてお話を伺いました。
ろうそくを作る際に使われる串、そして、九州に生息する貴重な天然のハゼの実を使って作るハゼ蝋。
和ろうそくの芯は、イグサの繊維を和紙の上に巻いたもの。これを串に刺してロウをつけていくのだそう。全てが植物から作られています。
和ろうそくの種類は大きく分けて2つ。「棒型」と「いかり型」だそうです。
女将の手にある和ろうそくは、神社・仏閣等で利用される大きめのものです。
ちなみに、磯部ろうそく店の和ろうそくは、京都清水寺にて行われる「千日詣り」で使用されているとのこと。沢山の参拝者の願いや思いに寄り添う献灯用のろうそくが、ここ岡崎から京都に運ばれているなんて。光栄に思います。
和ろうそくに火を灯していただきました。
これが、なんとも神秘的で不思議な体験。
まず、和ろうそくと洋ろうそくの違いに、鈍感な私は気づくことができるのだろうかという不安があったのですが、似て非なるもの。違いは一目瞭然です。
まず、和ろうそくの炎は、洋ろうそくに比べて縦に長い。そして、力強い。だから明るいんです。
そして、煙が少ない。煤も出にくいんだとか。
あと、ろうが垂れない。
そして、これが一番印象に残ったこと。風もないのに炎がひとりでに揺れるんです!
窓も開いていない、エアコンもついていない地下室。
私の鼻息が原因かもしれないので、試しに息も止めてみました。
それでも、炎が、時に小さく、時に大きく、まるで生きているかのように揺らめいているんです。
これは、ろうそくの中を流れる空気が炎を揺らめかせているのですが、ろうそくは、悲しみのある人のそばに寄り添うものだと女将に教えてもらいました。
御仏壇に語りかけるとき、それに応えるように和ろうそくの炎がゆらぎ、それによって悲しみが癒されることがあるのだとか。
本当にそんな気持ちにさせられる、暖かい炎です。
女将が芯切りをしているところです。
芯が長くなりすぎると、こうやってお世話をしてあげないんといけないんです。
何だろうな。ろうそくが、愛おしく思えてきます。
ちなみに、落語の寄席で最後を飾る「真打」の由来が、和ろうそくに関係していることも教えていただきました。ろうそくの芯を切るのは、最後の出番の人。芯切→芯打→真打と変化したようです。
これ、かわいくて、すごく素敵でした。究極の癒しの時間。
見つめていると、一瞬、違う世界に吸い込まれるような感覚に陥りました。
和ろうそくの最期。
これが本当に神秘的。心が揺さぶられる。
和ろうそくは、完全燃焼するんです。芯も残さず消えていくんです。
しかも、消える前に、ジュッというような音が聞こえたんです。お別れを告げてくれたような。
女将によると、消え方はいつも同じではないとのこと。最後に大きめの炎をあげて消える子もいれば、優しくそっと消えていく子もいるのだそうです。
儚さを感じました。
最後に、製造の作業風景を見学させてもらいました。
磯部ろうそく店では、全ての行程が手作業で、職人が1本1本丁寧に仕上げています。
実は、磯部ろうそく店は、2011年に火災がおきました。その時、和ろうそくを作る特殊な道具は全て灰となってしまったのです。
あきらめかけた時、廃業する和ろうそく屋さんが道具を譲ってくれることになったのだそうです。同業者は商売敵なんかじゃなかった。数えきれない人に背中を押してもらい、磯部ろうそく店の明かりは今日も灯され続けているのです。
(磯部亮次はじめて物語から)
串に芯をさし、芯づけ、もみつけ、そして下がけというロウをかけては乾かす作業を何度も繰り返し、ろうそくは太くなっていきます。
時間をかけて丁寧に作ったものだからこそ、命を宿したかのような力強く暖かい火が生まれるのだと思いました。
想像以上の明るさと揺らぎ。
ぜひ、たくさんの方に和ろうそくの灯を知ってもらいと心から思える体験でした。
磯部ろうそく店、ぜひ訪れてみてください。