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ゼレンスキー大統領「オデッサの港湾施設へのロシア軍のドローン攻撃は全世界の安定を破壊」

佐藤仁学術研究員・著述家
オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃(写真:ロイター/アフロ)

「ロシア政府はグローバル規模での食糧マーケットの破壊や通貨危機を起こそうとしています」

2023年8月3日にウクライナのゼレンスキー大統領は自身の公式SNSで、ロシア軍が使用しているイラン製軍事ドローン「シャハド」での攻撃、ロシア軍のドローン攻撃の脅威を世界に向けて訴えていた。

ゼレンスキー大統領は「昨夜37機のシャハドが一晩で奇襲してきました。そのうちの何機かは破壊しました。しかし、破壊したのはほんの一部です。誰も怪我しなかったのは幸いでした。オデッサの港湾施設にも多くのドローン攻撃があります。ウクライナ政府は世界中の国々と協力して防空システムの増強に努めています」とコメント。

続けて「世界中の人にとって重要なのは、ロシア軍のこのテロリストのような攻撃に慣れてはいけないということです。あらゆるロシア軍の攻撃は世界中の共通の問題です。ウクライナにとってだけではなく、ウクライナの港やインフラをロシア軍が破壊しようとしていることは全世界の安定を破壊します」と語っていた。さらに「ロシア政府はウクライナを攻撃するだけでなく、グローバル規模での食糧マーケットの破壊や通貨危機を起こそうとしています。ロシア政府には、そのようなグローバル社会を破壊することでお金を儲ける人がいるんでしょう。とても危険なことです」と訴えていた。

ロシア軍は2022年10月からイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウや主要都市を攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物やインフラ施設にも攻撃を行っている。ゼレンスキー大統領が述べているようにウクライナの港や民間施設へのドローン攻撃による破壊はウクライナだけでなく世界中への食糧輸出などにも打撃を与えている。

2023年8月になってもイランの神風ドローン「シャハド」による奇襲は続いており、ウクライナ軍も迎撃して破壊している。そのためイランの軍事ドローン「シャハド」の破片や残骸の写真がSNSなどで公開されることも多い。また最近ではロシアで「シャハド」を製造していると報じられている。

ウクライナ軍では「移動式ドローン迎撃車」を作り、機関銃や地対空ミサイルで「シャハド」を迎撃して破壊している。ミサイルやドローンを探知すると警報(サイレン)が鳴り、その場にドローン迎撃車が向かって行き迎撃して破壊している。「移動式ドローン迎撃車」の後部に設置された地対空ミサイルやライフル銃で迎撃している。また車に乗らなくとも兵士らが地上から機関銃や小銃などを発砲して「シャハド」を迎撃して破壊している。だがゼレンスキー大統領もコメントしているように全てのドローンを迎撃できるわけではない。

▼ゼレンスキー大統領の公式SNS

オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃
オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃写真:ロイター/アフロ

オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃
オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃提供:Oleh Kiper/Odesa Regional State Administration/ロイター/アフロ

オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃
オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃提供:Press Service of the the Operational Command South of the Ukrainian Armed Forces/ロイター/アフロ

オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃
オデッサ州の港湾施設にロシア軍のドローン攻撃提供:Press Service of the the Operational Command South of the Ukrainian Armed Forces/ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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