地域によって異なる景気判断
日銀は5日に地域経済報告(2021年7月)を公表した。地域経済報告とは別名、さくらレポートとも呼ばれるもので、表紙がピンク色となっている。同様のレポートはFRBにもあり、正式には地区連銀経済報告だが、こちらの表紙はベージュ色であったため、ベージュブックと呼ばれている。
さくらレポートとは、日銀が四半期ごとに開く支店長会議に向けて、日銀の本支店等の地域経済担当部署が日頃、企業ヒアリング等を通じて収集している各地域の経済金融情勢に関する調査を取りまとめた報告書のことである。日本を9地域に分け、それぞれの景況感が示されている。
今回のレポートでは、中国と四国は「持ち直しのペースが鈍化している」として景気判断を引き下げた。その一方、北陸と近畿では「総じてみると持ち直している」、「全体として持ち直している」として判断を引き上げた。北海道、東北、関東甲信越、東海、九州・沖縄の5つの地域は判断を据え置いた。
これを見る限り、日本経済は地域によって景況感が異なっている。電子部品・デバイスの増加などで北陸や近畿は設備投資などにも好影響を与えているのに対し、半導体不足によって広島での自動車生産に悪影響が出るなどしており、四国では個人消費などの持ち直しの動きが一服しているようである。
このさくらレポートでも示されているように、足下の国内景気については、まだら模様となっている。新型コロナウイルスによる影響は当然残るが、ワクチン接種拡大への期待もある。
日銀短観をみても製造業は回復基調となっており、非製造業も大企業でなんとかプラスを回復している。基調は回復しつつあるものの、力強い回復とまではいえない。これが結果として株式市場の上値を抑えるとともに、長期金利については上昇しづらい状況となっている要因といえるのではなかろうか。