ワールドカップと金融危機
6月12日からブラジルでワールドカップが開催される。開幕戦となるブラジル対クロアチアの審判は、日本の西村主審と相樂亨副審、それに名木利幸副審の3人が務めることになったそうである。まさに快挙といえるが、もちろん日本代表選手にも活躍してもらい、まずは決勝トーナメントに進んでほしい。
それはさておき、今回のワールドカップはブラジル大会。次回は2018年にロシアで開催されるが、前回は2010年の南アフリカ大会であった。BRICSと呼ばれた5か国のうちの3か国での連続開催というのは、新興国の発展の勢いを物語るものかと思われる。
前回大会の南アフリカ大会が開催されたのは2010年6月から7月にかけてであった。日本では探査機「はやぶさ」が地球に帰還したタイミングでもあったが、このときすでに欧州の信用不安が吹き荒れていた。ワールドカップと世界経済には直接の影響はないと思われるものの、その年に起きた世界経済に関わる出来事を追いながら、過去のワールドカップの歴史を振り返ってみたい。
戦後初めて開催されたのは1950年のブラジル大会、1954年スイス、1958年スウェーデン、1962年チリ、1966年イングランド大会と続く。1970年はメキシコ大会、1974年は西ドイツ大会。1978年はアルゼンチン大会。
1982年はスペイン大会となったが、この年、メキシコ政府は1000億ドルの対外債務は支払い不能である旨公表し、これをきっかけに世界的な債務危機が引き起こされた。
1986年はそのメキシコでの大会となったが、その前年の1985年にプラザ合意があり、ドルは急落した。日本ではバブルが発生しつつあった時期に重なる。
1990年はイタリア大会。前年の1989年11月にベルリンの壁が崩壊し東西ドイツは統一に向かい、12月にはマルタ会談により冷戦が終結した。日本のバブルが崩壊した年でもあった。
1994年の開催地は米国。
1998年はフランス大会。5月にロシアの通貨危機が発生し、LTCMが9月に破綻に追い込まれた。日本のデフレがスタートしたのはこの頃とされている。
2002年は日本と韓国での開催。
2006年はドイツ大会。この年あたりからアメリカの住宅価格が下落に転じサブプライム・ローン問題が発生した。それが2008年のリーマン・ショックと呼ばれるような世界的な金融経済危機の引き金となった。
2010年は南アフリカ大会。欧州の信用危機が発生した年であった。
そして今回の2014年、ブラジル大会である。世界的な金融経済危機は去ったが、日米欧の中央銀行は危機に際して、過去に例のない手を打ってきた。日銀はデフレ対策という名のもとに、2013年に異次元緩和を決定した。ECBもいまだ追加緩和を行ってきている。果たしてこの年に何が起きるのか。過去には大きな危機等もない開催年もあったが、今年はどうであろう。