自宅から駅やバス停までの「歩いて●分」はどれほどなら許容できるのか
住宅の住みやすさを推し量る指標の一つとして、駅やバス停などの公共交通機関への窓口からどれほどの距離にあるかが挙げられる。人々は具体的にどれほどの距離なら許容できる、望ましいと考えているのだろうか。内閣府が2017年2月に発表した「公共交通に関する世論調査」(※)から、自宅と駅・バス停との距離に関する要望の実情を確認する。
次に示すのは回答者が引っ越すことになった場合、自宅から駅やバス停までの徒歩での所要時間として、どの程度までなら許容できるかを尋ねた結果。現在住んでいる場所の実情ではなく、願望としての値であることに注意。当然、回答者の現状、例えば子供が居る、歳を取っていて徒歩では遠出が難しいなどが反映されている。
全体としては最多回答は「5分から10分未満」で4割近く。「10分から15分未満」が3割。合わせて5分から15分未満で2/3となる。「5分未満」を合わせると、15分未満で8割を超える。不動産の物件案内で「駅から●分」の類は大よそ分速80メートルである事を合わせ考えると、「自宅から駅やバス停までの距離は1.2キロ未満と考えている人が8割を超える」と見ればよい。もちろんこれは通常の人の話であり、高齢などの理由で15分未満の行動範囲がもっと狭くなる場合もある。
男女別では女性の方が、年齢階層別では高齢者の方が、より駅やバス停が近くにあった方が良いと考えている。身体的な事情を考えれば、大よそ理解できる動きではある。特に70歳以上では5分未満ですでに2割、10分未満で区切れば6割が該当する。距離そのものの概算も高齢者の場合、単純に分速80メートルの値を使うわけにもいかず、長さの点では時間よりももっと短くなるだろう。
これを「現在の」居住地や一部従業上の地位別に見たのが次のグラフ。
現在居住地別では大よそ大都市圏に住む人ほどある程度の時間を許容できる、地方に行くほど近場が良いとの認識となる。引っ越し先、つまり居住地の希望としては、現状よりも一層交通の便が良い場所に住みたいとの願望が表れている。
また従業上の地位別で主婦に限ると、近場を望む人が多い。体力的な問題に加え、買い物やパート、子供の送り迎えなどを考慮すると、交通の便が良いところを望むのは当然かもしれない。他方学生は(回答者数が少ない(56人)ためにぶれが生じているのも一因だが)交通の便には多少ルーズさが見て取れる。
各回答項目の中央値を用い、概算的な平均値を算出した結果が次のグラフ。
女性、50代、主婦の短さが目に留まるが、それも合わせて大よそ10分から15分の枠組みに収まっている。今件は年齢や健康状態、世帯構成にも考慮する必要はあるが(つまり属性別の時間の差異がそのまま距離の差異に比例するわけではない)、住宅の環境の良し悪しを判断する基準の一つになるだろう。
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