プレミア8季目に突入した吉田麻也は語る。「キャリアハイのシーズンにしたい」
バーンリー対サウサンプトンのプレミアリーグ開幕戦が10日に行われ、日本代表DF吉田麻也に出番は最後まで訪れなかった。
昨シーズンの吉田は、12月に就任したラルフ・ハーゼンヒュットル監督の下で、3バックのCB中央としてフル稼働した。ところが、4月下旬に患った肺炎の影響でラスト3試合を欠場。仕切り直しとなる今季開幕戦にかける思いは強かったが、ベンチスタートを命じられた。吉田が主戦場にしていたCB中央のポジションには、代わりにイングランド人DFのジャック・スティーブンスが入った。
肝心の試合では、サウサンプトンの拙さが目立った。前半こそ拮抗した展開になったが、後半に入るとサウサンプトンの足が止まった。
強風と強い雨のせいか、追い風のバーンリーにロングボールで押し込まれ、後半18分にDFヤニク・ヴェステルゴーがハイボールを見失って後逸。これをバーンリーのFWアシュリー・バーンズに拾われ先制点を許した。その後も、サウサンプトンのエンジンはかからない。後半25分には相手のクロスボールに、サウサンプトンのDFラインが棒立ちという失態…。バーンズをフリーにして追加点を許すと、その5分後にも自軍のパス回しを奪われ失点を重ねた。結局、昨季15位のバーンリーを相手に、サウサンプトンは0−3の完敗を喫した。
試合後のミックスゾーンで、吉田は自身の気持ちを明かした。
「プレシーズンは初日から合流しているし、プレシーズンマッチにも出ていた。そのなかで、開幕戦に出られなかったというのは、単純に言い訳できない。その事実を受け入れないと。やっぱり、この監督から信頼を得られないのは、就任してから何回かあるので。自分の足りないところもあるし、足りないところを補っていって、チャンスを待ちたい。チャンスが来たときに、結果を出せるように準備をするしかないです。まぁ、いつも通り(序列の)後ろからスタートということで。ただ例年より、後ろじゃないかなという感じはします」
ハーゼンヒュットル監督が志向しているのは、前線からのハイプレスに重きを置くモダンサッカーだ。そのなかで、CBに求められる役割は「プレッシング」と「ビルドアップ」。この2つは、シーズン開幕前のキャンプでも重点的にトレーニングが行われたという。
「ビルドアップの練習はすごくやっていて、プレッシャーとビルドアップの2つがキャンプで重点的に行われた。プレッシャーのところは問題なかったけど、ビルドアップで僕よりジャック(スティーブンス)が良かったという判断だったと思います。でも1試合終わっただけだから、あまり悲観せずにチャンスを待ちたい。競争相手がフィルジル・ファンダイクやデヤン・ロブレン(いずれも現リバプール)、トビー・アルデルヴァイレルト(現トッテナム)ではないので、そこは十分戦えるかなと思います」
吉田の言う通り、悲観する必要はまったくないだろう。3失点ともDFラインの乱れから喫したもので、守備に大きな課題が見えた。CB中央の位置で先発したスティーブンスも安定感がなく、前半にはスペースへのロングパスのカバーに入ったものの、足元を滑らせて後逸というシーンも。バーンリーにネットを揺らされたが、わずかにオフサイドの判定で命拾いした。内容的にはハーゼンヒュットル監督の就任後の試合で「最低部類」と位置づけられるもので、次節リバプール戦で何かしらの“テコ入れ”が行われるのは間違いない。昨シーズンのレギュラーだった吉田にも、まだまだ挽回のチャンスはありそうだ。
吉田にとって、今季でプレミアリーグ挑戦8季目となった。日本代表DFがサウサンプトンに加入したのは、ロンドン五輪後の2012年。2003年に8歳でクラブの下部組織に加わった24歳MFのジェームズ・ウォードプラウズに次ぎ、サウサンプトンで2番目に在籍年数の長いプレーヤーとなった。
しかも、吉田は8月で31歳の誕生日を迎える。年齢的に見ても、32歳のFWシェーン・ロング、31歳のGKフレイザー・フォースターに次いで、3番目の年長者である。ただ、チームを引っ張っていく立場になっても、危機感はまったく失っていないという。
「『在籍何年目』とかはあんまり関係ない。いつも言っていますけど、(移籍市場が開いて、新加入選手がやってくる)半年半年の勝負。チームも若いセンターバックの選手をひとり取ったし、競争はずっとある。やるべきことをやって、最終的には僕らが良いポジションでシーズンを終えたい。そして、自分もたくさん試合に出て、『自分を出せた』というシーズンにしたいです」
「8年目になりプレミアリーグも長くなった。8月で31歳にもなる。だから今後、そんなに長い契約はもらえない。1シーズン、1シーズンを最後だと思ってやらないといけないと思う。キャリアハイのシーズンにしたいと思います。そこが目標です」
吉田の言う通り、序列では後方からのスタートになった。しかし、これまでも監督交代のたびに序列が下がるものの、最終的に指揮官の信頼を勝ち取って、レギュラーの座を奪い返してきた。
「競争はずっとある。チャンスが来たときに、結果を出せるよう準備するしかない」。そう語る表情に焦りは見えず、むしろドンと構えている印象を抱いた。勝負はここから──。世界最高峰と呼ばれるプレミアリーグで揉まれてきた吉田の姿には頼もしさすら感じられた。