急転直下の解散風の中も「18歳選挙権」法案8党合意
100人もの高校生大学生が「18歳選挙権」シンポジウム
11月12日、衆議院議員会館に100人もの高校生大学生が集まっていた。
行われていたのは「Act18」という「18歳選挙権」の実現をめざす高校生・大学生のキャンペーンの国会シンポジウム。船田元 議員(自民)、北側一雄 議員(公明)、渡辺周議員(民主)、馬場伸幸議員(維新)、西野弘一議員(次世代)、水野賢一議員(みんな)と各党国会議員が並び、パネルディスカッションが行われていた。
先週、「18歳選挙権実現法案」が、「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」で8党が大筋合意し、いよいよ今臨時国会にこの8党で、この「18歳選挙権実現法案」が提案される事になると報じられていた。
しかし、そんな中、急転直下のように言われ始めたのが、解散の話だ。
この日も、自民党の船田元議員は、繰り返し「解散は総理の専権事項」であると言っていたが、実際には、19日解散、2日告示、14日投票などとマスコミも含め、まことしやかに言われている。
問題なのは、解散になれば、国会に提案された法案が「廃案」になるということだ。
シンポジウムでは、プロジェクトチームの座長で自民党の船田元 議員から、仮に衆議院が解散になる様なことになった場合でも、解散前に、あらためてこれまで積み上げてきた8党で合意文章を結び、これまでの計画通り、通常国会でこの「18歳選挙権実現法案」を成立させ、2016年夏に行われる参議院議員選挙からは、18歳から投票できるようにするとされた。
「18歳選挙権」実現までのこれまでの流れと論点
「18歳選挙権」については、与野党8党による「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」で議論が続けられてきた。
プロジェクトメンバーは、船田元 議員を座長に、自民党からは他にも逢沢一郎 議員・磯崎陽輔 議員、公明党から北側一雄 議員・大口善徳 議員・中野洋昌 議員、野党からも民主党から座長代理も担う武正公一 議員・渡辺周 議員・小川淳也 議員、維新の党から馬場伸幸 議員・浦野靖人 議員・畠中光成 議員、次世代の党から江口克彦 議員・西野弘一 議員、みんなの党から水野賢一 議員・三谷英弘 議員・松沢成文 議員、生活の党から鈴木克昌 議員、新党改革から荒井広幸 議員で構成される。
この8党で、「18歳選挙権」の実現をめざしている背景には、今年の通常国会で成立した「国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)」改正および、その際に結ばれた「8党合意」がある。
「国民投票法改正案」提出した8党は、提出と同時に、「8党合意」を結び、その中で、この「国民投票法改正案」成立から2年後の2016年までに選挙権年齢を「18歳」に引き下げ、さらには「国民投票法」上の国民投票年齢も同時に2016年に「18歳」に戻すことが明記されているからだ。
これまでに、この8党による「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」では、6月19日の第1回プロジェクトチームで、船田座長が次期臨時国会での公選法改正案提出を目指す方針を提示。
9月30日の第2回プロジェクトチームで、施行期日や少年法との関係、憲法教育など、引き下げに伴って検討すべき事項について各党で意見集約することを確認。
10月16日の第3回プロジェクトチームで、施行期日や少年法、民法との関係など選挙権年齢の引き下げに伴う論点について各党が検討状況を報告。
11月6日の第4回プロジェクトチームで、船田座長は公選法改正に向けて「選挙権年齢を公布の日から起算して1年を経過した日から施行することとし、施行以後初めて公示される国政選挙の公示日以後から適用。少年法との関係では、改正案の附則に特例規定を設け、18、19歳の未成年者が連座制の対象となる重大な選挙違反を犯した場合、家庭裁判所は検察官送致(逆送)を行うこと」などを盛り込むとりまとめ試案を提示。各党で座長試案を持ち帰り、次回までに回答をまとめてくることを確認と、進められてきた。
さらに、先週11月14日、第5回プロジェクトチームが行われ、選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げ、18、19歳の未成年者による重大な選挙違反を成人と同様に処罰対象とする公選法改正案を了承した。19日に8党で衆院に共同提出するとされた。
「18歳選挙権実現法案」は、これまでも現在行われている今月までの臨時国会で提案され、1月から6月で行われる通常国会で成立と準備してきたが、このままでいけば解散になる可能性が高いため、提出しても廃案になる。
こうした中、この間検討してきた与野党8党国会議員による「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」の座長でもある自民党の船田元 議員がこの日、仮に衆議院が解散になる様なことになった場合には、解散前に、あらためてこれまで積み上げてきた8党で合意文章を結び、これまでの計画通り、通常国会でこの「18歳選挙権実現法案」を成立させ、2016年夏に行われる参議院議員選挙からは、18歳から投票できるようにすると話したのだ。
公明党の北側一雄 議員も、さらに踏み込み、通常国会の中でもできるだけ早いタイミングでの成立をめざすと発言、野党からは、「通常国会冒頭でこの法案を成立させる」との声が出る程、与野党8党がこの「18歳選挙権実現法案」の成立を揃って前向きに語った。
解散総選挙となることが濃厚だが、そんな中でも、今国会中に少なくとも8党であらためて来年の通常国会の早い段階で「18歳選挙権」を成立させる旨が確認される事を期待したい。
万年野党でも「若者の政治参加参画特区」を提案していた
以前にも一度紹介しているが、万年野党では、昨年、まだNPO法人格を取得する前に、任意団体・万年野党(政策監視会議)田原総一朗・磯山友幸・高橋亮平の名前で、国家戦略特区として『若者の政治参加を通じた地域活性化に係る特区提案』を提案した。
その中心的な提案が「若者政治参加特区の創設」であり、現行の公職選挙法では、地方議会議員などの選挙に関しても、選挙権は20歳以上、被選挙権は25歳以上など、全国一律に法定されている。これを市町村議会などの選挙に関しては、選挙権・被選挙権の年齢などの制度につき、市町村が独自に設定できる特区とするというもので、例えば「選挙権は18歳以上、被選挙権は20歳以上」など、市町村が独自に引き下げを行うことを認めるなどとしていた。
こうした提案の背景には、若者の政治参加拡大の必要性について、指摘されて久しいが改善に向かっていない上、政治参加に関しては、若年層の投票率の低さとともに、議会での世代別構成、つまり20~30歳代の比率がごく限られる事が重大であり、国政以上に地方政治において、さらにその傾向は強い事がある。
国政における参画の権利の拡大や、世代間格差などの問題が指摘される中で、若者の参画を広げるということもあるが、同時に地域活性や経済成長を考える中でも、若者を当事者として巻き込んでいく必要がある。
残念ながら、こうした提案は、国家戦略特区に認められず、地域ごとに対応するものではなく、全国一律によるルールでとの事だったと聞いている。
今回、「18歳選挙権」については、一定の見込みが見えてきたが、成長戦略としてもさらに、被選挙権年齢についても引き下げを、さらには、地方議会選挙などの選挙権年齢等については、自治体毎に決められるようにするなどの検討も期待する。
『若者の政治参加を通じた地域活性化に係る特区提案』では、選挙権の年齢規定だけでなく、選挙権付与年齢に達していない子どもの選挙権を保護者が行使できるといった『ドメイン投票』などについても、さらに踏み込んだ制度の可能性も視野に入れる事を提案したが、こうしたこの国の民主主義のあり方についても含め、幅広い選挙制度の検討も今後必要なのではないか。