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ツール・ド・フランス100回大会 コルシカはツールを愛したか

宮本あさか自転車ロードレースジャーナリスト
海辺の観客たち。photo:Jeep.VIDON
海辺の観客たち。photo:Jeep.VIDON

「ツールはコルシカを離れた。しかし100年も待たずに、ツールはまた戻ってくるだろう。美しき島の風景は、世界中にTV中継され、人々に強烈な印象を残した。主役である選手たちも、SNS等で、島の華麗さを賛美した。30万人の島民さえも、テレビの前で、自らの島の魅力を再発見した。まさしく真の観光キャンペーンだった。数ヵ月後、さらには数年後に訪問客が増加することを、コルシカは期待している」(7月2日付 Le Journal du Dimanche紙より)

これがバカンスだったらどんなに良かっただろう……。大会関係者たちは何度も思ったに違いない。本当にコルシカは、ただただ美しかった。太陽の光が惜しみなく降り注ぎ、青い海と青い空が目を奪う。大移動の辛さも(フェリーや飛行機で島上陸、ゴール地へのボート移動、一本道は大渋滞)、島の魅惑が相殺してくれた。

しかし、迎えた側のコルシカは、初めてのツール・ド・フランスを、果たしてどう受け入れたのだろうか??

「正直に言うと、ツールはいかにもフランス的で、ちょっと子供だましの祭りのような感じがした」(7月2日付 Metro News紙より)なんて覚めた一般市民もいた。ツールの数週間前に「停戦解除」を発表したコルシカ独立派は、コース上に過激なスローガンをペイントしたとして、数人のメンバーが一時勾留された。そのせいでコース妨害も心配されたが、「ツール通過は邪魔しない」との声明が出され、関係者一同はほっと胸をなでおろしたものだ。

コルシカ地方自治体が招待に際して期待したのは、ずばり、経済効果だった。この点に関しては、上々だったと言えそうだ。なにしろ開幕地ポルト・ヴェッキオのホテルやレストラン、土産店等々は、ツール開催中の3日間で、通常バカンス真っ最中8月の1ヶ月と同じだけの売り上げがあった。市長ジョルジュ・メラは、今回のツール100回大会による世界への認知度と観光アピールで、今後1500万ユーロ(約17億円)の経済効果を見込んでいる。

「テレビにたっぷり放映されたおかげで、コルシカこの先、自転車ツーリストたちが目指す土地になる。また、ツールと関係なかった町には、今回は直接的な効果は見られなかっただろう。ただし将来的には、島の全体観光客が増加し、恩恵を受けるはずだ。なにしろテレビでこれほど連日、コルシカの良い面が語り続けられたことなど、なかったのだから」

(7月2日付 Corse-Matin紙より)

幸いにも、人口の一時的な増加により心配されていた自然破壊や環境汚染等も、一切見られなかった。その逆だ!アジャクシオ市の環境対策課の調査によると、コース通過による市街地の道路閉鎖のおかげで、ステージ当日の排気ガスによる汚染物質は中心街は25%、町周辺は50%も減少したそうだ。

ツールはまたいつの日か、コルシカに戻るだろう。100年も待たずに。

選手インタビューも海の上で。photo:Jeep.VIDON
選手インタビューも海の上で。photo:Jeep.VIDON
自転車ロードレースジャーナリスト

フランス・パリを拠点に、サイクルロードレース(自転車競技)を中心とした取材活動を行っている。「CICLISSIMO」「サイクルスポーツ」誌(八重洲出版)、サイクルスポーツ.jp、J SPORTSサイクルロードレースWeb等々にレースレポートやインタビュー記事を寄稿。

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