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「今、自分が学生ならどんな会社を選ぶか」〜多くの会社の採用を見てきた人事コンサルタントの私の場合〜

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
私はこんなさわやかな学生ではありませんでしたが・・・(写真:アフロ)

■4桁以上の会社の「組織の中身」を見てきました

私は現在、人材研究所という20名足らずの小さな人事のコンサルティング会社を経営しています。そこで、採用や人材育成、評価報酬制度の設計、マネジメント能力の向上、組織風土の改革、退職の予防・・・といった組織課題の解決をサポートしています。

もう11期になり、毎年80社〜100社ほどのクライアントにコンサルティングをさせていただいているので、おそらくですが4桁を超える数の会社の「組織の中身」を見てきました。

そういう私ですが、聞きたい人、参考になる人がいるかどうかわからないのですが、これから就職・転職活動をする人に向けて、もし、今、自分が大学生だったら、どういう会社に行きたいだろうか考えてみたいと思います。単なる一人の価値観であり、これを一般化するつもりは全くありません。しかし、自分で会社を選ぶ軸を考える上で、たたき台としていただけるのでしたら本望です。

1.同期がたくさんいる

ただ、1000人とかいなくてもよいです。人間には認知限界というものがあり、全員認識できるくらい(せいぜい数十人〜200人くらいか)でよいと思います。社会人同期は人生最後の同窓生的な存在です。損得なく付き合えて、人生のベンチマークであり、良きライバルにもなってくれて、一生自分を鼓舞してくれます。

2.社員への要望が高い

無難な目標を無難にこなしていては、自分の可能性を最大限引き出すことはできません。無茶な高い目標を追うことで、潜在能力に火をつけたいと思います。仕事の負荷や出した価値を、もらう金銭的報酬だけとバランスさせたくはありません。自分に降りかかる艱難辛苦こそ、自分を鍛えてくれるからです。人は弱いから自分で自分に厳しい要望はなかなかできません。プレッシャーを与えてくれる会社はありがたいと私は思います。最近ではすぐブラックと言われてしまうかもしれませんが、「仕事の報酬は仕事」、そんな言葉が特に若いうちは好きでありたいです。

3.新しい会社か変化の激しい業界

伝統的で成熟した会社や業界では若手はベテランに太刀打ちしにくいことが多いです。そのため、過去経験の蓄積が必ずしもプラスにならない領域で、社会人何年の選手達とガチンコ勝負してみたいと思うような気がします。若い、を理由に逃げたくない、逃げなくてもちゃんと勝負できる会社が面白いのではないでしょうか。

4.既得権を持ったぬるい中年達がいない

私はチャレンジしない人はあまり好きではありません。若い時から、中身のない肩書きにしがみついて、虚勢を張る人は情けないと思ってきました。ですから、もう自分にはダメだと思ったら、潔く後進に道を譲る器量のある大人が多い会社がよいと思うでしょう。むろん、その代わり自分もそうであること前提です。

5.外形的な要因で差別しない

学歴や資格、出自や国籍、など、外面で判断せずに中身を見る会社でなければ、どんなに努力しても徒労に終わるかもしれません。私のような出戻りなども(私は最初の会社のリクルートを一度辞めて、その後で戻りました。このあたりの話はよろしければこちらをご覧ください)、はなから拒絶するのではなく、目の前の人をちゃんとよく見て、よかったら受け入れてくれる。そんな度量があるならうれしいと思います。

6.誰かの悲しみの上に成り立つ事業ではない

別に特段社会的意義の高い仕事がしたいわけではなく、ニッチなニーズを埋めるだけの仕事でもかまわないと私は思っています。最澄の言葉「一隅を照らす、これ国の宝なり」が好きなのです。しかし、人の生き血をすすってまで儲けたいと思いません。どこというのは言うに憚られますが、人から何かを奪う仕事ではなく、人に何かを提供する仕事がしたいです。

7.多様な人との出会いが多い

まだ、ここにない出会いの可能性が日々ある会社もいいなと思います。井伏鱒二は「さよならだけが人生だ」と言いましたが、出会いがなければさよならもありません。つまり、人生はないということです。しかも、出会いの数だけ別れは増えるというけれど、今はSNSなどで、「別れられない社会」ででもあることですし。

■結局は、必要とされ、愛着を持てるかどうかが重要ではないか

結局は自分を必要としてくれる会社に行きたいと思います。自分が好きな会社ではなくて。こんなくだらない、可能性しかない学生の自分を見出してくれ、期待をかけてくれる。これ以上に意気に感じることがあるでしょうか。

大人になった今でも会社を見る目などはなはだ怪しい自分なのに、学生時分などさらにないに決まっています(というか、本当にありませんでした。社会のことは全く無知でした)。

また、いくら考えても未来などわかりませんし、別に賢く立ち回って、勝ち馬に乗りたいわけでもありません。自分が役に立ちたい、役に立てるというところで実際に少しでも成果を出すことができれば御の字ではないかと思うのです。結局、必要なお金ぐらいはついてくると勝手に信じています。

就職の会社選びは株式投資とは違います。就職活動の最初の頃は、いろいろなデータで分析して考えることも必要でしょう。

しかし、最後は、儲かりそうかどうかという「計算」ではなく、どんなダメなところがあっても愛せるか、その会社の仲間や事業のために骨を折れるか、といった「愛着」で選ぶべきではないでしょうか。

そう思うと、いろいろ考えても、自分には今でもやはりリクルートしかないなあと思うのです(今のリクルートが昔の自分に内定をくれるかわかりませんが)。一つ限りの心を盗まれてしまって、他社への新卒入社のイメージがわかないのです…。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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