本来あるべき金融政策に戻すべき
22日に2023年10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨が公表された。このなかの「金融政策運営に関する委員会の検討の概要」のなかに下記の意見があった。
一人の委員は、最近の物価指標や春季労使交渉に向けた経営者の発言等を踏まえれば、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の確度は、従来と比べ一段と高まっていると考えられ、最大限の金融緩和から、少しずつ調整していくことが必要との見方を示した。
これは田村審議委員の発言ではないかとみられる。ただし、これはあくまで一人の意見であり、「現時点では、賃金の上昇を伴う形での物価安定の目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には、なお至っておらず」というのが大方の意見であった。
しかし、12月6日に氷見野日銀副総裁が講演で、物価動向の説明とともに出口を意識させる発言をしてきた。さらに7日には植田総裁が参院財政金融委員会で発言しており、そこで年末から来年にかけて「一段とチャレンジングになる」と述べたと伝わった。
植田総裁は19日の会見で、「国会でのやり取りとしては今後の仕事の取り組み一般について問われたので2年目にかかるところなので一段と気を引き締めてというつもりで発言した」と発言していたが、なぜ「年末」を付けていたのかは、気にすべきところか。
結果として19日の日銀の金融政策決定会合は「全員一致」での「現状維持」。期待された総裁会見での「マイナス金利解除の示唆」もなかった。
果たしてこれで来年1月22日、23日の金融政策決定会合でのマイナス金利政策の解除を含む正常化の動きはないとみて良いのであろうか。
今年9月の決定会合もそうであったが、日銀がやっと重い腰をあげて金融政策を双方向に戻すと市場も読んで備えていたが、結局、何もしなかった。いや、これはできなかったとも言えるのかもしれない。
12月の会合もそうである。市場はマイナス金利解除の可能性を意識して動いており、日銀にとっても市場に大きな動揺を与えることなく、舵を切る大きなチャンスであった。
そのチャンスは生かすべきであると思われる。いまこそ、本来あるべき金融政策に戻すべきと考える。25日に予定されている日本経済団体連合会審議員会での植田日銀総裁の講演に注目したい。