Yahoo!ニュース

性暴力被害の包括的ケア「大阪SACHICO」が存続の危機 署名も #専門家のまとめ

小川たまかライター
https://note.com/sachico_seigan/n/n1f0f2

 性暴力被害に遭った人への包括的ケアを行うワンストップ支援センター「大阪SACHICO」が存続の危機にあります。

 法的支援、心理サポートなど専門的なサポートを行うワンストップの必要性は近年になってようやく知られ始めましたが、運営費不足や人材確保が問題となっており、数少ない病院拠点型のワンストップである「大阪SACHICO」も、国や府からの補助金不足から、現在の拠点である阪南中央病院から移転を求められています。

ココがポイント

52カ所のうち、大阪SACHICOを含む「病院拠点型」は12カ所にとどまり、「相談センター中心連携型」が37カ所に上る。
出典:産経新聞 2023/9/23(土)

開設以来22年度まで利用者は増加傾向で、同年度は初診だけで406人が利用したが、昨年度は医師不足で対応に手がまわらないこともあり、約7割減の121人しか診察できなかった。
出典:朝日新聞 2024/6/7(金)

子どもや、動転して上手く話せない人は長時間の診療になり、知識やスキルを持った支援員が付き添います。でも、この支援員の人件費が出ない。
出典:生活ニュースコモンズ 2024/9/7(土)

エキスパートの補足・見解

 大阪SACHICOは病院拠点型ワンストップ支援センターとして全国で初めて2010年に開設され、日本でのワンストップのモデルのように考えられてきた場所です。

 2023年度の不同意性交事件の認知件数は2,711件、不同意わいせつ事件は6,096件ですが、全国のワンストップへの相談数は「2021年度は58,771件、2022年度は63,091件、23年度は上半期で35,990件」です。被害に遭った際に警察へ届けることができる人は10分の1とも言われており、暗数の大きさがうかがえます。ワンストップでサポートを受けてようやく警察へ相談する気持ちになれる人もいることから、必要な施設です。

 以前、取材をした被害当事者の方は「火事や交通事故のときに消防車や救急車が来なかったらどうすればいいのか途方にくれると思う。性暴力の被害者は傷だらけなのに手当てを受けられる場所がどこにもない」と、ワンストップの必要性を語っていました。

 性犯罪刑法の改正など報道が増えたことで、性暴力への関心は高まりつつありますが、被害当事者への支援・サポートはまだ先進国とは言えないレベルにあります。

(存続を求める署名についての説明は以下から確認できます)

性暴力救援センター・大阪SACHICO存続のための全国署名にご協力ください!(性暴力救援センター・大阪 SACHICO の存続と発展を願う会)

※「#専門家のまとめ記事」の規定に従い、文字数調整のために内容を修正しました。(9月21日18時)

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

トナカイさんへ伝える話

税込550円/月初月無料投稿頻度:月4回程度(不定期)

これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

小川たまかの最近の記事