北方領土に関する参加型の広報啓発活動への参加希望者は3割足らず(2018年12月発表版)
内閣府が2018年12月に発表した「北方領土問題に関する世論調査」(※)の結果によると、北方領土に関する参加型の広報啓発活動に参加を希望している人は3割足らずに留まっていることが分かった。
「北方領土問題」とは北海道本島の東側に位置する、日本固有の領土である北方四島(歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島)が、ソ連/ロシアによる法的根拠を持たない状態での占拠が続いている状況に対し、日本への返還を求めている問題。「法的根拠」無くとは第二次世界大戦の末期1945年に、当時のソ連がその時点で有効であった日ソ中立条約を無視して対日参戦し、北方四島を占領、ソ連がロシアになった現時点でも占拠し続けていることを指す。またこの問題が存在するため、日ロ間では現在もなお平和条約は締結されていない。
その北方領土を巡っては外交交渉の際のバックボーンとなる国民世論を高めるため、返還署名運動や各種公演・イベントが開催されたり、北方領土の日(2月7日)を中心に行事が展開されるなど、さまざまな北方領土返還の要求運動が取り組まれている。このような北方領土に関する参加型の広報啓発活動に、何らかの形で参加したいか否かを尋ねたところ、参加希望者は25.8%に留まる形となった。積極的な参加希望者は1.1%でしかなく、残りの大半は「機会があれば」「誘いがあれば(考えてもいい)」と消極姿勢に留まっている。
強い拒否感を覚える人は8.3%に留まっているが、それを含めた参加否定派は7割近く。
それではなぜ運動に参加したくないのか。不参加意思を持つ人(「あまり参加する気はない」「絶対に参加したくない」回答者)に複数回答で理由を聞いたところ、最上位についたのは「内容がよく分からない」で、35.2%の人が同意を示している。
参加の意思に関する設問は「北方領土に関する参加型の広報啓発活動に参加することについて、あなたの気持ちに最も近いものをこの中から1つだけお答えください」のみ。具体的に何をするかは説明に無く、また実際に一般の人の活動状況もあまり認識されていないことから、何をするのか分からないのに参加する気持ちにはなれないと考えるのは道理ではある。
また、個人ベースでの参加で何か物事が動くのか、現状ですでに行われているであろう活動を見ても、目だった反応や社会の変化は見られない以上、参加意義は無いのではと感じるのも仕方が無い。「自分が参加しなくても他の誰かがやってくれる」も同様の意見として考えられる。
「北方領土の問題に関心が無い」のは仕方が無いが、「政治的運動参加に家族や周囲の理解が得られない」との回答が14.5%出ているのは、担当部局において頭の痛い話に違いない。
上位2項目は広報活動そのものの不足が多分に影響していると考えられる。参加を促すためには、まずその活動自身の実情を積極的に、多方面に向けて、分かりやすく正しい内容をアピールすべきだろう。
■関連記事:
中国・習主席の外交は大よそ否定的、アフリカなど一部諸国では高く評価
日本のアメリカ合衆国への親近感75.5%…日本の諸外国への親近感の実情をさぐる(2018年版)
※北方領土問題に関する世論調査
直近分は2018年10月18日から10月28日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1663人。男女比は806対857、年齢階層別構成比は10代42人・20代127人・30代206人・40代286人・50代286人・60代300人・70歳以上416人。過去の調査もほぼ同様の形式で行われている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。