実父による性虐待事件、名古屋高裁で逆転の有罪判決
名古屋高等裁判所の堀内満裁判長は一審を破棄し、懲役10年の実刑判決を言い渡した。法廷では判決理由の読み上げが続いている。
2017年、当時19歳の女性に対して、実父が性的虐待を行ったとして準強制性交等罪に問われた事件。昨年3月26日に名古屋地裁岡崎支部で無罪判決が言い渡され、同月に出た他の3件の性犯罪無罪判決とともに性犯罪に関する刑法に注目が集まるきっかけとなっていた。
一審では、女性が中学生の頃から実父による性虐待が始まり、起訴された2件の準強制性交についても行為自体が行われたことは認定していた。また女性の同意がなかったことも認めたが、一方で法律が定める「抗拒不能」の要件には満たないため無罪と判断していた。
高裁では、精神科医で性暴力の被害者心理について「第一人者」と言われる小西聖子さんが出廷。計4日間、合計15時間にわたる鑑定をした結果について、被害者に「回避」傾向が強く、鑑定に時間がかかるタイプであるものの、聞き取りを進めるうちに「(父親から)ペットのように扱われた」といった怒りの感情が見られるようになったと証言していた。
また、子どもの頃から繰り返される性虐待において、被害者が無力感を抱き諦めて抵抗しなくなるのはむしろ「普通」の状況であると指摘。一審では、女性が父に大学の入学金を依頼したことなどから「人格が完全に支配されていたとは言えない」と判断されたが、検察側は証人の証言をもとに「(親に抵抗できることとできないことがあるのは)虐待家庭で普通のこと」と主張していた。