ギリシャのユーロ離脱があった際の影響
どうやらギリシャはデフォルトやユーロ離脱も辞さない構えのようである。バルファキス財務相が18日のユーロ圏財務相会合で新たな改革リストを提出しない方針を示した。18日から20日にギリシャのチプラス首相はロシアに外遊の予定である。ユーロ圏財務相会合が開かれる18日までにギリシャが新提案を提出しなければ、ギリシャに対し要求を受け入れるかユーロ圏を離脱するか最後通告を行う可能性もある。しかし、25~26日のEU首脳会議まで交渉は持ち越される可能性も残るが、ギリシャは新提案を出す心づもりはなさそうな雰囲気であり、ユーロ離脱に備えてロシアのプーチン大統領とあからさまなひそひそ話をするつもりであるのか。
仮にギリシャのデフォルトやユーロ離脱が現実化した場合、その被害が及ぶのはギリシャ国民だけではない。もちろん金融市場にもそれなりの影響を与えるであろうが、ユーロというシステムそのものに対する懸念が生じる。ユーロ圏の結束をむしろ強めるとの見方もあるが、ユーロ圏という壮大な経済圏をドイツ中心に作り上げたシステムにヒビが入り、単一通貨のユーロというシステムに対する懸念が生じることも予想される。これの影響を最も受けるのはドイツではなかろうか。
ギリシャがユーロを離脱となれば、英国のEU離脱懸念もあり、欧州のパワーバランスに変化が生じることも予想される。これがどのような事態を引き起こすのか。今回は前回のギリシャ・ショックのような金融経済への影響よりも政治上の影響の方が大きいように思われる。
仮にギリシャがユーロを離脱するとして、その混乱による金融市場への影響に対してECBは一時的な対策を取る可能性はあるものの、すでに量的緩和を実施していることで、それがショックを和らげる格好となり、あらたな金融緩和等はすぐに実施してくる可能性は薄いのではなかろうか。
世界的な金融経済のリスクが高まることがなければ、米国や日本への影響も一時的なものに止まろう。しかし、少し様子を見る必要もあり、FRBの正常化、利上げはバーナンキ前議長に習って9月ではなく12月の可能性が高まるのではなかろうか。
日本への直接的な影響は限定的とみられる。欧州でのドイツ、ロシア、英国、そして米国のパワーバランスへ影響については、日本よりも中国の方が影響度は大きいかもしれない。しかし、新たな金融危機の発生でもない限りは、たとえば日銀がギリシャ問題により追加緩和に追い込まれるようなことは考えづらい。
金融市場への影響としては、米国の利上げを控えて、欧州の変調は外為市場では大きな変動要因となりうる。リスク回避の円買い、金融政策の方向性の違いによる円売りなどにより売買が交錯し、ボラティリティの高い状況となる可能性がある。円債も逃避先としてのニーズも出てこようが、米国債の動向次第ではこちらも変動が大きくなる可能性がある。