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若手花火師の力作も、豪華なスターマインも!「大曲の花火 春の章2024」レポート

やた香歩里花火鑑賞士な旅ライター

GWまっただなかですが、みなさんいかがお過ごしですか?  私はGW初日を、秋田県大仙市で開催された「大曲の花火 春の章」で迎えました。若手花火師によるコンクールや、大曲の煙火店、そしてアメリカの花火業者のスターマインなど充実した内容で、とても楽しめました。その様子をレポートします。

【大曲の花火 春の章2024】
開催日時:2024年4月27日(土)19:00~20:30
開催会場:秋田県大仙市大曲 雄物川河畔「大曲の花火」公園

「大曲の花火」は年に3回開催される

「大曲の花火」といえば夏の「全国花火競技大会」が有名ですが、実は春と秋(2021年までは冬にも)にも開催されています。2022年には「SPRING FESTA」として「春の章」と「冬の章」を2日間連続で開催。2023年からは、冬の章で行われていた若手花火師による新作花火コレクションを「春の章」に吸収し、「春の章」で新作花火コレクションと、海外花火業者とコラボする「世界の花火 日本の花火」を実施するようになりました。

夏は70万人もの人を集めるという「大曲の花火」ですが、春と秋の会場はこのような感じで、ゆとりがあります。

会場中央付近で花火を満喫できるのも春と秋ならでは。
会場中央付近で花火を満喫できるのも春と秋ならでは。

この日、秋田は好天で暑いくらい、昼間は余裕で半袖で出歩けるほどでした。ですが日が傾くにつれて一気に気温が下がり風も冷たくなってきて、最終的にはダウンを着込むほどに。
4月も終わりとはいえ、東北の夜は油断できません。

2024年「春の章」スタート!

そしてまだ空に青みが残る中、いよいよオープニング花火が始まりました!

TWICEの「ONE SPARK」にのせて、華やかなスターマインで幕を開けました。マジックアワーの花火って、独特のキラキラ感と儚さがあるんですよね。

完成度とオリジナリティが交錯するコンクール

そして秋田ゆかりの直木賞作家、西木正明さんの追悼の白菊が上がったのち、「新作花火コレクション」が始まりました。

新作花火1番、芳賀火工(宮城)の石村佳恵さんの10号玉芯入割物「昇曲導付 三重芯変化スパンコール」。昇曲導からキラキラと輝き、色変化も余韻も美しい作品でした。
新作花火1番、芳賀火工(宮城)の石村佳恵さんの10号玉芯入割物「昇曲導付 三重芯変化スパンコール」。昇曲導からキラキラと輝き、色変化も余韻も美しい作品でした。

新作花火コレクションでは、「10号玉芯入割物」「新作花火」の2部門で競われます。

芯入割物は王道の丸い花火。花火の中にもう一つの同心円がある花火を「芯入割物」というのですが、「新作花火コレクション」では三重芯(みえしん)、すなわち芯が三重以上に入った花火(全体で四重以上の円に見える)と規定されています。今回は最大で五重芯の花火が上がりました。
10号玉とは直径約30cmの花火で「尺玉」とも言われ、300m以上の高さに上がり、上空で開いた時の直径も300m以上という大型花火。

新作花火は、4号玉10発、5号玉5発を組み合わせて表現された作品です。具体的な何かの形を花火で描いたり、全体で一つの世界観を表したり、ストーリーを表現したりと独創性の高い作品が見られます。
※4号玉は直径約12cm、5号玉は直径約15センチの花火玉。

新作花火の部:生島煙火(大分)の生島永光さん「打出の小鎚~小判がザックザク~」青みがかった打出の小鎚が現れたあと、キラキラ光る小判がたくさん降ってきた!
新作花火の部:生島煙火(大分)の生島永光さん「打出の小鎚~小判がザックザク~」青みがかった打出の小鎚が現れたあと、キラキラ光る小判がたくさん降ってきた!

作品に対して論評できるほどの知見はないので、あくまで感想レベルの話になりますが…この新作花火コレクションに参加できるのは45歳以下の花火師とのこと。この年齢だと、もはや煙火店での大黒柱的な方もいれば、初めての花火競技大会という方もいて、完成度に差が見られたかなと思います。ですが様々な発想の花火が見られて、とても興味深かったです。

競技花火の面白さとは?

花火競技大会は、見慣れないと楽しみ方がわからない方が多いのではないでしょうか。花火の良し悪しの基準や、新作と言われても、どのあたりが今までの花火と違うのか?などがピンこないのではないかと思います。

とはいえ、普通の花火大会では見られない、とても凝った花火や変わった花火が見られるのが競技花火大会の面白いところ。

また、「春の章」の新作花火コレクションは出品者18名と少な目(なお2023年は20名。年によって多少異なります)で、作品も大玉の「芯入割物」と、複数の花火を組み合わせる「新作花火」で全くタイプが違うので、競技花火初心者にも楽しみやすいのではないかと思います。見慣れてきて、花火の種類や煙火店さんの名前や特徴など覚えてくると、ぐんと楽しくなってきますよ。

2024年の新作花火コレクションはいかに?

翌28日には結果発表があり、芯入割物の部では響屋大曲煙火(秋田)・今野祥さんの「昇曲導付 五重芯変化菊」が優勝。準優勝は山﨑煙火製造所(茨城)・石井稔さんの「昇曲付 五重芯銀点滅」でした。

10号玉芯入割物の部 優勝:今野祥さん(響屋大曲煙火)「昇曲導付 五重芯変化菊」
10号玉芯入割物の部 優勝:今野祥さん(響屋大曲煙火)「昇曲導付 五重芯変化菊」

10号玉芯入割物の部 準優勝:石井稔さん(山﨑煙火製造所)「昇曲付 五重芯銀点滅」
10号玉芯入割物の部 準優勝:石井稔さん(山﨑煙火製造所)「昇曲付 五重芯銀点滅」

いずれも五重芯の花火で、芯がきれいに出ていて完成度が高く、会場内でも歓声が上がった作品。加えて小松煙火工業(秋田)・伊藤航也さんの「昇銀龍 四重芯変化菊」が端正で美しく、どれかが優勝?とわくわくしました。伊藤航也さんは優秀賞を受賞されました。

10号玉芯入割物の部 優秀賞:伊藤航也さん(小松煙火工業)「昇銀龍 四重芯変化菊」龍が絡み合いながら昇っていくような曲導も印象的でした。
10号玉芯入割物の部 優秀賞:伊藤航也さん(小松煙火工業)「昇銀龍 四重芯変化菊」龍が絡み合いながら昇っていくような曲導も印象的でした。

優秀賞は2作品あり、残る1作品は紅屋青木煙火店(長野)の青木大典さん。

10号玉芯入割物の部 優秀賞:青木大典さん(紅屋青木煙火店)「昇り曲付 三重芯変化菊」くっきりとした三重芯で、七色に発色する曲導もワクワク感を高めてくれました。
10号玉芯入割物の部 優秀賞:青木大典さん(紅屋青木煙火店)「昇り曲付 三重芯変化菊」くっきりとした三重芯で、七色に発色する曲導もワクワク感を高めてくれました。

なお、芯入割物の部優勝の今野祥さんは新作花火の部でも優秀賞を受賞し、最優秀賞を受賞しました。

新作花火の部 優秀賞:今野祥さん(響屋大曲煙火)「雷神が咲かせる季節の華」
新作花火の部 優秀賞:今野祥さん(響屋大曲煙火)「雷神が咲かせる季節の華」

「新作花火の部」優勝は、北日本花火興業(秋田)・今野貴文さんの「巫女神楽~神懸り、舞い踊る~」でした。1発1発の花火の変化が複雑で、15発とは思えないくらい密度が濃く見え、作品としての見ごたえ、完成度が素晴らしかったです。

新作花火の部 優勝:今野貴文さん(北日本花火興業)「巫女神楽~神懸り、舞い踊る~」
新作花火の部 優勝:今野貴文さん(北日本花火興業)「巫女神楽~神懸り、舞い踊る~」

なお今野貴文さんは2022年から3年連続して新作花火の部で優勝(2022・2023年は最優秀賞も!)と、圧倒的な成績を残しています。

新作花火の部準優勝は、10号玉芯入割物の部でも優秀賞を受賞した、小松煙火工業(秋田)の伊藤航也さんで、これはなかなか最優秀賞を決めるのが難しかったのでは…と思いました。

新作花火の部準優勝:伊藤航也さん(小松煙火工業)「苔むす森と太古の巨木」和火のシックな花火に少し暗めの緑の花火がかぶさり情景がイメージしやすい作品でした。
新作花火の部準優勝:伊藤航也さん(小松煙火工業)「苔むす森と太古の巨木」和火のシックな花火に少し暗めの緑の花火がかぶさり情景がイメージしやすい作品でした。

優秀賞2作品のうちのもう1作品は、山内煙火店(山梨)の山内祐一さん「Japonism~美しき日本の華~」。2024年3月の「高崎HANABIコンクール」で優勝した「日本の華~幽玄の美~」に続き、和火一色なのに繊細で多彩な変化を魅せる作品でした。

新作花火の部 優秀賞:山内祐一さん(山内煙火店)「Japonism~美しき日本の華~」
新作花火の部 優秀賞:山内祐一さん(山内煙火店)「Japonism~美しき日本の華~」

個人的に強く印象に残ったのが、伊那火工堀内煙火店(長野)・柗井のの子さんの新作花火「火の鼓動」。昇曲導の部分にも細かい変化をつけ、開いた花火の中にも二重の大小の輪っかが現れたり、内側から外側に向かって3段階、4段階に脈打つように変化していったりと、色数は少ないのに変化が細かくて全く単調さがありませんでした。

柗井のの子さん(伊那火工堀内煙火店)の新作花火「火の鼓動」
柗井のの子さん(伊那火工堀内煙火店)の新作花火「火の鼓動」

なお、柗井のの子さんは特別賞の(公社)日本煙火協会会長賞を受賞されました。

「新作花火」はふだん花火大会でみるような花火とは違うタイプのものが多く、実験的と思われるものも見られます。花火の表現の幅広さを味わえますし、これが各社の花火大会に反映されていくのかなと思うと今後の楽しみにもつながります。

音楽と花火が共演するスターマインも充実!

そんな競技花火の合間にはインターバル花火があり、大曲の5社の煙火店がそれぞれ1つづつのプログラムを担当。音楽に合わせた各社の華やかな花火が上がりました。

インターバル花火第一幕:北日本花火興業「ありがとう~花火と音楽のチカラ~」
インターバル花火第一幕:北日本花火興業「ありがとう~花火と音楽のチカラ~」

競技参加者が18名なので、オープニングとエンディングを除けば競技花火3名ごとにインターバル花火が入り、とてもいいバランスでした。競技花火は基本的に淡々と上がるので、合間に入る音楽つき花火がとてもいいアクセント。いずれもちょっとした花火大会のフィナーレクラスのスターマインなので、見ごたえがあります!

インターバル花火第四幕:和火屋「夢を追うすべての星たちへ」 
インターバル花火第四幕:和火屋「夢を追うすべての星たちへ」 

花火をよく見ている人、特に大曲の煙火店をよく知っている方には、各煙火店ごとの個性も堪能できますね。

そしてフィナーレは、「春の章」の特徴である世界の花火と日本の花火のコラボレーション。

2024年はアメリカのロッツィ社でした。世界で最も権威がある花火競技大会と言われる、カナダのモントリオール国際花火競技大会で2023年に銀賞を受賞しています。

さすがフィナーレ、今花火大会中最大のワイドさで、情熱的なリンジ―・スターリング「Artemis」に合わせて豪華な花火が上がりました。

そう、とても見ごたえはあるんです。ですが、これは私の見る目が足りないのかと思いますが、どのような形で世界と日本の花火がコラボレーションしているのかがどうもよくわからずで…

日本の花火はそもそも相当レベルが高くてあちこちで多彩な花火が見られるので、これがアメリカの花火会社の特徴!というような違いがあまりわからない。そのあたり、もう少しプログラムやHPなどで、あらかじめ解説があると嬉しいなと思います。

ともあれ、伝統的な芯入割物、独創的な新作花火、質のよい花火による音楽つきのスターマインやワイドスターマインなど、バラエティに富んだ花火が見られてとても良い花火大会でした。

混雑が苦手な方、ゆっくりじっくり楽しみたい方にオススメ

バラエティ豊かでクオリティも高い、それなのに混雑少な目なのでストレスも少なく、個人的にとても満足度の高い花火大会です。

秋田駅近くに泊まりましたが往復のJR(在来線)も、満席ではありますが立っている人も1つの車両に10人くらい?という程度の混雑具合。夏の殺人的な混雑を知っている人からすればびっくりするほど快適です。

混雑が苦手だから花火大会はちょっと…という方にぜひおすすめしたい花火大会です。

大仙市では、この夏に「全国花火競技大会」(8月31日〈土〉)が控え、秋(10月5日〈土〉)には「大曲の花火 秋の章」が開催されます。

興味のある方はぜひ、「大曲の花火」公式サイトなどで情報をチェックしてくださいね!

「大曲の花火」公式サイト

花火鑑賞士な旅ライター

宮崎生まれの大阪育ち。人生の約半分を京都で過ごし、現在は千葉在住。もとからの旅好きが、関東移住を機に花火にはまり、旅の目的に花火鑑賞が加わりました。遠くへの旅行も好きだけど、身近なお出かけも好き。どこかで見た素敵なものを、誰かに伝えたい。知って欲しい誰かと知りたい誰かを繋ぎたい。日本酒ナビゲーターで温泉ソムリエで花火鑑賞士な旅人。

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