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オランダの名ストライカー、フンテラール 今季いっぱいで引退

中田徹サッカーライター
18−19CL対レアル・マドリーの勝利をサポーターと喜び合うフンテラール(写真:ロイター/アフロ)

■オランダリーグ150号の記念ゴールを決めたフンテラール

 アヤックスのベテランストライカー、フンテラール(37歳)は12月12日のPECズウォーレ戦の7分、アントニーのクロスを頭で合わせて、オランダリーグでの150ゴール目を決めた。そして、フンテラールはいつものゴール後のように大きく口を開けて何かを叫んでから、アシスト役のところに駆け寄って笑顔になり、仲間と輪になった。

 PECズウォーレに挑むアヤックスは若手ストライカーのトラオレ(19歳)、ブロビー(18歳)を含む、多くのフィールドプレーヤーを負傷で欠いていた。今季、スーパーサブ兼若手ストライカーのメンター役を担っているフンテラールに、こうして初スタメン出場の機会が巡ってきた。

 開始早々、ゴールという結果を出したフンテラールは11分にも巧みなポストプレーでアントニーにパスを出し、プロメスのゴールをプレアシストした。その後もフンテラールはラストパスを通したり、積極果敢にシュートを打ったり、安定したポストプレーで味方をフリーにしたりとレベルの高いプレーを披露しフル出場を果たし、アヤックスの4対0の勝利に貢献した。

■突如の引退宣言

 試合後、フォックス・スポーツ(ライブ中継権利ホルダー)のフラッシュインタビューで、ハンス・クラーイ・ジュニア氏がフンテラールに尋ねた。そして、これがフンテラールの引退宣言インタビューになった。

 以下、インタビューの抜粋。

――怪我をしたりいろいろあったけれど、引退しようという気持ちがよぎったこともあったのでは?

「うん、最近ちょっと」

――(『おお!』と驚いてから)“最近”とはいつのこと?

「1ヶ月ほど、僕は辞めることについて頻繁に考えるようになった。その瞬間(=引退)は近づいている。今シーズンが現役の最後になる」

――思ってもなかった

「今、分かったよね」

――レベルを下げてプレーをするとかは? 本当にやめちゃうの?

「やめる」

 NOS(ダイジェスト番組権利ホルダー)とのフラッシュインタビューでは、こういうやり取りがあった。

――あと50ゴールで(オランダリーグでの)200ゴールですね

「それは無理だと思う」

――つまり?

「つまり、僕は今シーズンで辞めるから。だから200ゴールに届かない」

 その後、フンテラールは記者会見に出席し、改めて引退することを表明した。努めて笑顔で話すフンテラールだが、「僕は5歳でサッカーを始め、10代でデ・フラーフスハップに入り、それから成長を続けた。今(=今季終了後)、僕はサッカーを辞める。これで青春(ユース)も終わりだ」と語るくだりでは涙をこらえているようだった。

■引退宣言後、クローズアップされたメキシコ戦のPK

 フンテラールがプロのキャリアで決めたゴールの数は402。出場試合725に対して、この数字だ。

 PSVでは芽が出ず、最初のレンタル先のデ・フラーフスハップでも結果を残せなかったフンテラールは2003−04シーズン、AGOVV(オランダ2部リーグ)で26ゴールを決めて注目されるようになった。その後はトントン拍子。中堅クラブのヘーレンフェーンからトップクラブのアヤックスのエースストライカーに。さらにレアル・マドリー、ACミラン、シャルケと国際的なキャリアを歩んでから17−18シーズンにアヤックスへ戻ってきた。

 オランダ代表では同世代にファン・ペルシという異能がいたため、ワールドカップやユーロではスーパーサブの役割が多かったが、それでも代表歴代2位の42ゴールを記録した(1位はファン・ペルシの50ゴール)。

 今回の引退宣言の後、オランダでクローズアップされたのは、2014年ワールドカップの決勝トーナメント1回戦、対メキシコの終盤にPKで決勝ゴールを決めたフンテラールが喜びを爆発させてコーナーフラッグを蹴ったシーンだった。多種多様のゴールバリエーションを持つフンテラールの名ゴールの中でも、このPKは『苦戦からの開放』としてオランダ国民の脳裏に深く刻まれているのだろう。

 私個人としては、2018−19シーズンのCLで、アヤックスがレアル・マドリーを敵地で2対1と破り準々決勝進出を決めた後、フンテラールがピッチの上に最後まで残って闘牛士の真似をしながらサポーターと喜びを分かち合っていた場面が名シーンとして残っている。実は、フンテラールの出場機会はなかったのだが、誰よりも勝利の余韻に浸っている姿が印象的だった。

 PECズウォーレ戦の活躍によりフンテラールは全国紙『アルヘメーン・ダッハブラット』『デ・テレフラーフ』のベストイレブンに選ばれた。まだまだ彼はフィットしている。あと半年、“The Hunter”のシュートと、お手本のようなポストプレーを楽しみたい。

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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