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ウクライナ軍、FPVドローンでロシア軍の車両を次々と破壊「この国に武装車両の居場所はありません」

佐藤仁学術研究員・著述家
(提供:Press Service of the 72nd Black Zaporozhians Separate Mechanized Brigade of the Ukrainian Armed Forces/ロイター/アフロ)

2023年11月にウクライナ軍が公式SNSで「ウクライナは全世界に開かれた国家です。でも例外があります。例えば侵略者の武装された自動車にはウクライナでは居場所がありません」と投稿して、FPV(ファースト・パーソン・ビュー)神風ドローンでロシア軍の戦車や輸送車、装甲戦闘車などを攻撃して破壊するショート動画を公開していた。ウクライナ軍では2024年2月にロシア軍が侵攻してからロシア軍の破壊状況をほぼ毎日更新しており、2023年11月9日には装甲戦闘車が1万台を突破していた。ロシア軍の戦車や装甲戦闘車、輸送車などの多くの軍事設備や兵器がウクライナ軍のドローンで破壊されている。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ウクライナ軍では監視・偵察目的で調達した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させたり、ドローンごと突っ込んでいき爆発させたりしている。

そして神風ドローンが標的に突っ込んでいき爆発するシーンをFPVで撮影することも多い。FPVはドローンに搭載されたカメラからの風景が操縦者に見える。道路を走っているロシア軍の戦車や輸送車などを発見したら、すぐに攻撃を行うことができるので、監視ドローンで居場所を見つけてから別の部隊がミサイルで攻撃を行うよりも遥かに効率が良い。安価なドローンで高額の大型兵器を破壊できるのでコストパフォーマンスも高い。

ウクライナ軍では攻撃にFPV神風ドローンを多用しており多くのウクライナ兵がドローン操縦の訓練を行い、実戦で攻撃を行っている。ドローン操縦の初心者は動かない監視塔や置き去りにされた戦車、塹壕など不動の標的を攻撃している。動いている戦車や逃げようとしているトラックなどを検知して、それらを追って行きスピードを上げて攻撃するにはドローン操縦のスキルがそれなりに必要である。だが、負傷兵や年老いて戦場の最前線に行けない人でもドローン操縦技術を身につければ、基地や部屋の中からロシア軍を攻撃することができ、ウクライナ軍に大きく貢献できる。ウクライナ軍ではロシア軍の動いている車両も徹底的に破壊するためにドローン操縦の訓練をしながらドローン操縦士の育成も行っている。実戦ですぐに身につけたスキルが生かせる。

公開された動画ではウクライナ軍のFPVドローンが次から次へとロシア軍の車両を破壊しており百戦百勝のように見えるように構成されている。だが、多くのドローンが攻撃に成功する前にロシア軍によって迎撃されている。

▼「侵略者の武装された自動車にはウクライナでは居場所がありません」(ウクライナ軍公式SNS)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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