どうしてこれほどまでに日銀総裁人事が注目されるのか
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政府が日銀の黒田東彦総裁(78)の後任人事について雨宮正佳副総裁(67)に就任を打診したことが5日わかったと日本経済新聞が伝えた。
金融市場では日銀総裁人事は大きな注目材料となるが、今回の人事は特に注目度が高い。それは日銀が行っていることと、経済実態そのものとの乖離が大きくなっていたためである。
その原因はアベノミクスと呼ばれた政策に対し、黒田日銀が2013年4月に量的・質的緩和という異次元緩和で答え、それを微調整を繰り返しながら10年間も続けていたことにある。
この政策の最大の弱点は、そもそも論として金融政策には無限の可能性などはなかったことにある。つまり、金融政策で物価や景気、はたまた賃金などが自在にコントロールなどできないことにあった。
それを日銀はこの10年間で証明した格好とあった。ただし、それを認めたくないために、金融政策の方向転換ができなくなってしまった。いわばアクセルしか機能せず、ブレーキもなく、バックもできない状態となってしまっていた。
これが物価が低迷し、金利に上昇圧力が掛からない状態であれば、日銀の政策が正しいかに見えた。ところが、世界的な物価の上昇を受け、欧米の金利に上昇圧力が加わったことで、安寧としていられる状況ではなくなったのである。
日本の物価と金利にも当然ながら上昇圧力が加わり、それに対して現在の黒田日銀は柔軟かつ機動的な対応ができなくなっていた。それが急激な円安を招き、その円安がさらに物価を押し上げるという悪循環に陥った。
それだけではない。長期金利まで抑え込むために巨額の国債を買入、さらに期間の長い共通担保オペまだ打ち出した。これは物価上昇時に行うべき金融引き締めとは反対の金融緩和策の強化ともいえるものであった。
このような異常な金融政策がこのまま維持できることは考えづらい。少なくとも金融政策の正常化は必須の状態となっている。消費者物価は日銀の目標の2%の二倍にもなっているのである。
黒田総裁は正常化に向けた動きはできなかった。このため、後任の総裁であれば正常化に道筋が付けられるのではとの期待も出てくる。
ただし、雨宮氏は現副総裁であり、これまでの決定会合では常に賛成票を投じていた。このあたりにやや疑問も残る。
鈴木俊一財務相は7日の閣議後会見で、政府が日本銀行の雨宮正佳副総裁に次期総裁就任を打診したとの一部報道について、「財務省として打診したことはない」と述べた(7日付ブルームバーグ)。
この記事もやや気になるところではある。いずにしても来週にはこのあたりもはっきりするであろう。さらに注目すべきは副総裁人事となる。少なくともこれまで2回のような(?)副総裁人事ではないことを望みたい。