あなたの街では黄色?白? 身近な春の花・タンポポ
この時季、道端にタンポポをよく見かけるようになります。のどかな田んぼのあぜ道であったり、近所の公園であったり、空気が悪そうな交通量の多い幹線道路の脇であっても見かけることがあったり…。身近な所にかわいらしく咲いているタンポポの姿から、春の始まりを感じる人も多いかもしれません。幼少の頃に綿毛をふーっと吹いた経験だって、誰にでもあることでしょう。
セイヨウタンポポと二ホンタンポポ
タンポポは春の花というイメージがありますが、実は、冬の間から花を咲かせる種類もあります。日本の国外から入ってきた外来種の「セイヨウタンポポ」は、春が来る前の比較的寒い時期であっても早くから花を咲かせます。一方、日本に昔からある在来種の「ニホンタンポポ」は、春になって暖かくなってくる頃に花を咲かせるのです。
全国の気象台ではサクラやウメなどと同様に季節の指標として、タンポポの開花の日を観測しています。この場合も、冬でも咲いているセイヨウタンポポではなく、原則として、春に咲き始めるニホンタンポポを対象にしています。昨年2013年にタンポポの開花を観測した日は、福岡で3月13日、大阪で3月21日、東京で3月23日、仙台で4月4日でした。
セイヨウタンポポとニホンタンポポの違いは、花を見ると分かります。花(頭状花)の下のがくのような部分(厳密には「総苞外片:そうほうがいへん」と呼びます)が、下に反り返っているのがセイヨウタンポポ、反り返らずに上に向かって覆うようにくっついているのがニホンタンポポです。
暖かな春になるとセイヨウタンポポもニホンタンポポも一緒に咲いている時季になっているため、通りすがりにパッと見ただけでは分かりません。タンポポを見つけた際にちょっと立ち止まって、花の下の部分を確かめてみるのも楽しいかもしれません。生命力の強いセイヨウタンポポが日本の在来種のタンポポよりも勢力を拡大しており、ニホンタンポポの群落を身近で見つけると、なかなか嬉しいものです。
在来種にはいろいろ …白いタンポポも
ここまで、ニホンタンポポとひとくくりにしましたが、実は、日本に昔からある在来種のタンポポはもっと細かく分類できるのです。花や総苞外片の形状などで地域によって差異があり、カントウタンポポ、トウカイタンポポ、カンサイタンポポ、シナノタンポポなど、様々な種類があります(分類する研究者によって異なることがあります)。
また、タンポポの色と言えば「黄色」で当然と思う人が多いかと思いますが、読者の皆さんの中には「タンポポって、白い花でしょ?!」と思う人も少なからずいるかもしれません。
日本に昔からあるタンポポの一種である「シロバナタンポポ」は、その名の通り花の色が白色~薄いクリーム色なんです。四国や中国地方などを中心に西日本には比較的広く分布しているタンポポで、地域によってはこちらを身近に感じる人もいらっしゃるのかと思います。
私事ですが、埼玉県育ちの筆者はタンポポと言えば「黄色」と完全に思い込んでいました。関西で暮らすようになって初めてシロバナタンポポを見つけた時には、その優しい色合いのかわいらしい姿に感動すら覚えたものです。(ちなみに、気象台のタンポポ開花の観測対象として、このシロバナタンポポも認められています。)
黄色いタンポポしか見かけたことがないという地域も多いとは思いますが、関西では私自身、大阪・京都・彦根などでシロバナタンポポに出会っています。黄色いタンポポが大多数という地域でも、ある一定の地域にまとまった群落を作っていて、春になると急に白いタンポポの一団が現れる地域もあるのです。
市民が参加するタンポポ調査
タンポポはとても身近である反面、実はその詳しい分布などがまだ完全には分かっていない植物です。外来種の移入、都市化の影響、在来種の減少、外来種との雑種の拡大など、ほかの動植物でも問題になっていることが身近なタンポポでも取り沙汰されています。
西日本では、市民が研究者と一緒になって分布などを調べる「タンポポ調査」が定期的に行われていて、今年2014年に予備調査、来年2015年には本調査が実施されます(タンポポ調査・西日本実行委員会が主催)。市民一人ひとりが気軽に参加できる、しかも学術的には大変貴重な調査ということで、ほかにあまり例がないほど大量のデータを得られているとのこと。ご興味がある人はホームページをご覧になり、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。(タンポポ調査・西日本2015 ホームページ)