インドで高額紙幣が突然無効に、日本でもあり得るのか
インドのモディ首相は8日夜のテレビ演説で、高額紙幣の1000ルピー(約1600円)札と500ルピー(約800円)札を演説の約4時間後から無効にすると突然発表した。手元にあるこれら2種類の紙幣については10日以降、銀行などで新たに発行する2000ルピー札や新しいデザインの500ルピー札に交換するよう指示した。
モディ首相はこの理由について、パキスタンを本拠地とし、インド国内でテロ行為を行っている過激派グループが、紙幣を大量に偽造し活動資金に充てているためとした。また市民の間でも、脱税目的の現金決済が行われていると説明したようである。
インドでは現金取引が主流であり、新札との交換期間が来月30日までとされたことや、1度に交換できる金額にも制限があるため、首都ニューデリーでは、急いで小額紙幣に交換しようという人たちがATMに殺到しているそうである(以上、NHK、朝日新聞、時事通信の記事より)
国民の混乱を招いてもこのような策を講じるほかはなかったものとみられるが、その理由というのが偽造紙幣を駆逐するためというのも興味深い。
日本では偽造紙幣が大量に出回るような事件はここにきてあまり聞かない。カラーコピーによる偽札を使うような事件はあったが、精巧な偽造紙幣が出回ったという記事は見たことがない。それだけ現在の日本の紙幣に使われる印刷技術が高度であるということでもある。このため偽造紙幣のためにインドのような事態が発生することは考えづらい。
ちなみに日本で紙幣として遣われているのは日本銀行券であり、日銀が発行している。日銀券の製造は独立行政法人国立印刷局が担当しているが、製造された紙幣は日銀がその費用を支払って引取る。
お札の表面に赤い印章があるが、これは「日銀総裁」の印章で、「総裁之印」と篆書という字体で書かれている。日銀券というお札は安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証している格好となっている。
紙幣は簡単に偽造されないように印刷は精巧なものの、本来はただの紙にしか過ぎない。しかし、この紙に印刷された金額の価値を与え紙幣が円滑に使われるようにするための管理をしているのが日本の中央銀行である日本銀行といえる。
銀行などの金融機関は個人や企業への支払いに必要な分を用意するため、日銀の当座預金から引出すことによって日銀券を日銀の窓口から受取り、これによって日銀券が世の中に送り出され、お札の発行となる。