「文在寅政権に制裁を!」米韓の人権団体からわき上がる批判
公開処刑など北朝鮮の自国民に対する人権侵害を調査・記録しているNGO「転換期正義ワーキンググループ」(TJWG=本部・ソウル)など、韓国国内に拠点を置く複数の北朝鮮人権団体は19日、「脱北民の声を抑えつけ、北朝鮮住民の人権を黙殺しようとする韓国政府を国際社会が監視し、制裁を加えてほしい」とする内容の共同書簡を国連の人権機関と欧州連合(EU)などに送ったことを明らかにした。書簡は17日に発送された。
共同書簡には「北韓人権市民連合」(NKHR)や「6・25戦争拉北人士家族協議会」などのほか、対北ビラの散布を巡り韓国政府が17日付で法人資格を取り消した脱北者団体「自由北韓運動連合」と「クンセム」を含め、21の団体が名を連ねた。
始まりは「金与正」
共同書簡は、「北朝鮮政権の要求により、最近、韓国政府が北朝鮮人権団体に対して取っている一連の措置は、懸念すべき統制の始まりとみている」「韓国は国際社会における普遍的人権の原則を捨て、民主主義まで毀損している」などと主張している。
韓国統一省は16日、北朝鮮の人権問題や脱北者の定着支援を行う25団体に対し、会計などの「事務検査」を行うと通知した。TJWGのイ・ヨンファン代表はこうした動きに対し、「このような調査は、現政権の恣意的基準に符合しない、あるいは政府に従順でない団体に対し不利益の可能性を暗示するものであり、対北、対政府批判を封じ込める目的があると見るほかない」と訴えた。
北朝鮮に融和的な文在寅政権とこれら団体はかねてから摩擦を抱えていたが、最近、北朝鮮が脱北者団体のビラ散布に猛反発し始めたことで、その度合いが増している。
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脱北者団体によるビラ散布を巡っては、金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が先月4日に発表した談話で、韓国政府の責任を問う立場を表明。ビラ散布に対する法規制などの措置を迫った。これに続き、北朝鮮は南北首脳間のホットラインをはじめ、南北間の全ての通信連絡線を遮断。
こうした動きを受け、韓国政府は同10日、ビラ散布を行っている脱北者団体を南北交流協力法違反などで警察に告発し、両団体に対する法人設立許可を取り消すと発表していた。
しかし、その後も北朝鮮の強硬姿勢は変わらず、同19日には開城工業団地内にあった南北共同連絡事務所の爆破を実行した。
このような流れの中、韓国政府が脱北者団体の法人認可取り消しに踏み切ったことに対しては、海外の人権団体からも批判が出ている。
ロバート・キング元米国務省北朝鮮人権特使は18日、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)の記事で「問題は韓国政府の決定が金与正氏による険悪な非難の後に出たという点だ」と指摘。「韓国があまりに卑屈でへつらうような態度を示すと、北朝鮮に対して効果的な対応ができなくなる」との懸念を示した。
グレッグ・スカラチュー米国北朝鮮人権委員会(HRNK)事務総長もVOAの記事で、脱北者団体の法人認可取り消しは「惨事」であり、「韓国政府は北朝鮮指導部をなだめるため、脱北民運動家らの声を抑圧しているという事実を明確に示した」と主張。「韓国はわれわれの知っていた民主主義国家なのか」との疑問を提起した。