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大阪を拠点に国際報道やっています 『非東京の眼』であり続けたい

石丸次郎アジアプレス大阪事務所代表
朝中国境の豆満江源流域で二人の北朝鮮軍将校と筆者(中央)1995年12月

フリーのジャーナリストになって25年、主に朝鮮半島や中国の取材をして来た。新聞やテレビなどの報道機関勤務ではないので定収入はないし、取材費も自分で捻出しなければならない。ずっと、かつかつの暮らしをしてきたけれども、自分のやりたいテーマの取材に専念することはできた。今、イラク、シリア、イランなど中東を取材する仲間4人と共に、小さな事務所を大阪に構えて、国際報道を続けている。

[参考 北朝鮮内部情勢など1000本超の記事を配信してきた]

私たちジャーナリストの仕事というのは、「調べる」ことと「届ける」ことがワンセットだ。「調べる」とは取材し資料に当たること。それを整理して、読者に読んでもらい、視聴者に見てもらうことが「届ける」だ。言うまでもなく、報道における「届ける」という機能を担って来たのが新聞やテレビなどマスメディアだ。私も、マスメディアを通じて取材成果を発表し、報酬を得て生活費と活動費に充ててきた。

マスメディアの国際報道は圧倒的に東京に集中しているので、「届ける」仕事のためにしばしば東京に出張に行かなければならない。打ち合わせや企画提案程度の出張なら、交通宿泊費はほとんど場合、自腹だ。

東京のマスメディアの人に会うと、「なんで東京に来ないの?」とよく言われる。国際報道の取材現場は東京ではなく現地である。私の場合なら中国、北朝鮮、韓国だ。政治や外交分野はいざ知らず、東京を拠点にしていないからといって取材にハンディを感じたことは一度もない。

「国際報道をやるなら東京だ」と、決めつけのように言われると、上からの目線を感じて、大きなお世話だと、かちんと来たことは一度や二度ではない。そういう時にはメラメラと闘争心が沸いてくる。「取材の中身で勝負しようやないか」と心の中で叫ぶ。

◆社会を見る目は複眼がよい

あらゆる分野で東京一極集中が進んできた。報道も例外ではない。日本国内で流通する情報の多くが、東京圏に住む人の感覚や価値判断で制作され、東京のメディアを通じて発信されるようになってしまった。一方で地方のメディアは衰退を続け、「届ける」力も随分弱まった。

情報発信の東京一極化は全く止めどがない。こんな傾向にささやかでも抵抗したいというのも、大阪を拠点にジャーナリストを続けてきた理由の一つだ。社会を見つめる眼は複眼・多眼である方がよいに決まっている。一方向から見ただけでは、光の当たらない陰影や凹凸があることはわからない。私は「非東京の眼」でありたい。

インターネット、スマホの普及で、自力で「届ける」ことが随分できるようになった。大阪で十分勝負できると、日々わくわくして仕事をしている。

さて、9、10月に、大阪で開催されるジャーナリズム関連の二つのイベントに登壇させていただくことになったのでお知らせしておきたい。

一つ目は9月22日、ジャーナリストの安田浩一さんウェブマガジン主催のイベント 

'''『「ペンの力」とメディア〜レイシズム、ポピュリズム、ナショナリズムと闘うには』'''

西岡研介さん、 松本創さん、 安田浩一さんという歴戦の強者ライターたちと語ります。

もう一つは10月28日、新しい調査報道の在り方を考えるシンポ。

'''「衝撃の『パナマ文書』報道 政治資金を調査し伝える新しい仕組みを考える」'''(仮題)

越境・連帯する調査報道の新地平を考えます。

「非東京」発信のイベントです。ぜひお越しください。

※8月25日付けの毎日新聞に寄稿した原稿を加筆修正したものです。

アジアプレス大阪事務所代表

1962年大阪出身。朝鮮世界の現場取材がライフワーク。北朝鮮取材は国内に3回、朝中国境地帯には1993年以来約100回。これまで900超の北朝鮮の人々を取材。2002年より北朝鮮内部にジャーナリストを育成する活動を開始。北朝鮮内部からの通信「リムジンガン」 の編集・発行人。主な作品に「北朝鮮難民」(講談社新書)、「北朝鮮に帰ったジュナ」(NHKハイビジョンスペシャル)など。メディア論なども書いてまいります。

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