アニメを見ただけで「銃殺」も…北朝鮮が統制を強化
韓流ドラマに対して大々的な取り締まりを行っている北朝鮮だが、外国製アニメに関しては、今まで特段の措置を取って来なかった。しかし、最近になってついに取り締まりを始めたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
最初に標的になったのは「ロビン・フッド」だ。
女子高生も公開裁判
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、最近になって学校や人民班(町内会)を通じて、アニメ「ロビン・フッド」を見ることはまかりならぬという命令が下された。
ロビン・フッドは元々、横暴な支配者に立ち向かって戦ったという中世イングランドの伝説上の人物だが、映画、アニメ、小説となり、世界的に知られるようになった。朝鮮中央テレビでも、2006年にアニメ版が放映されている。
横暴な王、腐敗した役人、欲深い貴族に立ち向かい、財産を奪って貧しい人々に分け与えたというストーリーだが、子どもたちのみならず、大人からも「まるでわが国の現実のようだ」と非常に好評だった。当局はそれを問題視し、禁止令を下したようだ。
親たちからは「子どもたちに正義とは何かをまともに教えないくせして、世界的な名作アニメを取り上げるなんて」「当局は何を恐れているのだ」と非難轟々だ。また、禁止したことで逆に人々の好奇心を煽り、見たがる人が増えている。
ただ、北朝鮮は外国映画を見たというだけで、大学生や女子高生までをも逮捕、公開裁判にかける国である。今後はアニメを見るのも命がけだ。
(参考記事:北朝鮮が女子高生を「見せしめ」公開裁判にかけた理由)
ロビン・フッドの次に標的になったのは、米国のアニメ「ザ・シンプソンズ」だ。
女子大生の悲劇
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、ザ・シンプソンズはUSBメモリやSDカードに保存されてヤミで流通しているものだが、当局は視聴禁止令を下した。その理由について情報筋は「核を危ないものとして描いている」ことを挙げた。
登場人物ホーマー・シンプソンの務めている原発は、何度もメルトダウンしそうになったり、爆発したりと、非常に危なっかしい。核実験に力を入れている北朝鮮当局にとって、人々に「核は危ない」という認識を植え付けるこのアニメは、非常に都合が悪いということなのだろう。
禁止の理由はそれだけではないようだ。
シーズン23の第1話には、金正日氏が登場し、合唱団が彼をバカにする歌を歌うシーンがあるのだが、北朝鮮当局としては絶対に認められないものだ。また、見た人は銃殺を含めた重罪に処せられる危険性もある。実際に最近、当局に逮捕された女子大生の悲劇が伝えられたばかりだ。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)
北朝鮮で出回っているものは、韓国で放映されている韓国語版と思われる。ちなみに、韓国のアニメ専門チャンネル「トゥニバース」で現在放送しているものはエピソード17で、当該のシーンが含まれるものはまだ放送されていない。