18歳以上の7%は「自己防衛のための発砲経験あり」…銃社会米国の実情をさぐる
銃の一般人への所有が許可され、その銃を使った事件が多発する米国。その米国における発砲経験や、銃と日常生活の関係の認識など、銃社会の実情を同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年6月に発表した調査報告書「America’s Complex Relationship With Guns」(※)から確認する。
今調査対象母集団では全体の3割が自ら銃を持ち、1割強が世帯内の自分以外で銃所有者がいる。併せて4割強が、容易に銃を使える状態にある。
銃を自ら所有していなくても、自宅外で他人の銃を用いて、さらには自宅内でもたまたま居合わせた第三者の銃を借りて、撃つ機会は生じえるが、実態としては自己防衛のために発砲した経験がある人は全体の7%に留まっている。これには警察官などによる業務上の発砲や、狩猟や競技における発砲は含まれない。
現在銃所有者に限定すれば17%、過去に所有した経験がある人ならば9%、一度も銃を持ったことが無い人では1%でしかない。銃を所有すると銃を使って自己防衛をしなければならないような事態に遭遇する可能性が高まるとは考えにくいので、危険な場面において銃所有者は積極的に対応手段として発砲したと考えるのが無難だろう。
自己防衛のために銃を所有している人は、いつでもすぐに敵対対象に銃を向ける、さらには発砲できるよう備えておいた方が、いざという時には対応がしやすい。銃所有者の38%は常に弾を込めてすぐに手が届く場所に銃を置いている。
無論銃所有理由が狩猟や競技用、仕事用であれば、悪用を防ぐため、あるいは防犯として弾と銃本体は別々の場所に保管し、手が届きにくい場所に置いておいた方がよい。しかし自己防衛のために所有している場合、必要な時にすぐに対処できないのでは意味が無い。実際、自己防衛が主な銃所有の理由の場合は5割近くが常に弾を込めたままで手が届く場所に置いていると回答している。狩猟や競技、仕事で使う場合は、2/3近くが絶対にそのようなことはないとしている。
男女別では男性の方が置いている頻度は高いものの、「絶対ない」の割合はほとんど変わらず。女性は誤動作リスクや子供の悪用を懸念しているのかもしれない。報告書にも「50歳未満に限定すると男女の差異は明らか。「常に」の回答率は男性で41%、女性で17%となる。50歳以上ではそれぞれ44%と40%になり、大した違いは無い」と説明されている。
自己防衛の武器としては頼りになる、しかし誤動作や悪用のリスクもある銃の所有。世帯への安全にとってはプラスとなると考えられているのか否か。興味深い結果が次のグラフ。
銃所有者は3/4が世帯に銃があることで安全を高めると認識しており、逆に低くなるとする意見は2%でしかない。回答者自身が銃を所有していなくても世帯内に銃がある場合、5割が安全性向上を認識し、低めるとの意見は6%のみ。本人も世帯の他の誰も銃を所有せず、世帯内に銃が無い人でも28%は高めるとし、変わらないは52%、低くしてしまうとの意見は2割のみに留まっている。
実態として安全性のプラスマイナス勘定がどのような結果になるのかは環境次第ではあるのだが、全般的な認識としては「世帯に銃があれば安全が向上する、少なくとも悪化することは無い」というのが大勢のようだ。
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※America’s Complex Relationship With Guns
2017年3月13日から27日と、同年4月4日から18日にかけて行われたもので、RDD方式によって無作為抽出された電話番号(携帯・固定を問わず)の対象者(18歳以上限定)に専用のウェブへアクセスし回答してもらっている。対象者がインターネットへのアクセス環境を持っていない場合は、タブレット型端末と無線インターネット接続環境が貸与される。対象者数は合計で3930人。国勢調査の結果に基づき、年齢や性別、学歴、居住地域、人種などでウェイトバックが実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。