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各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をさぐる(新興国編)(2024年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
新興国でも携帯電話の普及率は急速に上昇している(写真:イメージマート)

国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)では定期的に主要国(ITU加盟国)の携帯電話やインターネットに関する統計資料をまとめ、各国の動向を推し量れるデータを公開している。今回はその中から「新興国における、固定電話と携帯電話の普及率の推移」を2024年の時点で抽出し(収録されている値は2022年分まで)、状況の精査を行う。

「新興国」との言葉には色々な定義、区分があり、さらに国数も多い。すべてを追いかけていては雑多に過ぎるので、今回はG20各国のうち目にとまった国、具体的にはロシア・インド・インドネシア・ブラジル・フィリピンにスポットライトを当てる。

なお今件の「固定電話普及率」は、世帯ベースではなく個人ベース。普通一世帯に固定電話を複数台契約する状況はあまり想定できないことから、100%到達は困難な値であることを留意しておかねばならない。

それでは最初にロシア。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ロシア)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ロシア)

元々の固定電話普及率が低いこと、2000年から1、2年は携帯電話の普及率があまり伸びていないのが印象的。そして固定電話の普及率もあまり変化せず、携帯電話が急激な伸びを示している。

そして2003年以降携帯電話の普及率上昇度合いは加速している(もっとも2011年で一度失速が見られる。これは同年からロシアにおける契約者数のカウント方法をSIMカード関連で変更したからに他ならない。同国の携帯電話事情がダイナミックに変わったわけではない)。

携帯電話は他人との音声における情報のやり取りができるだけに限らない。SMSでのメッセージの相互交換、そしてマルチメディアフォンやスマートフォンのようにインターネットアクセス機能がある携帯電話なら、インターネットへの窓口となることを考えれば、この普及率の増加がロシアの社会にもたらした影響の大きさが改めて確認できる。

続いてインド。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インド)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インド)

インドでは元々国土の広大さに加えて経済的な問題や地形の関係などから、電話系インフラの普及率は低いものだった。2000年当時の普及率は携帯電話で0.3%、固定電話でも3.1%でしかない。

それが固定電話は横ばいから漸減し、携帯は2005年あたりから急激に伸びを見せている。総務省のデータベース[https://www.soumu.go.jp/g-ict/country/india/index.html 【「世界情報通信事情」のインドの項目】を見ると状況がある程度把握できるが、複数会社による競争の激化が、携帯電話普及率の向上に拍車をかけたと考えられる。

一方、2012年では携帯電話の普及率が減少を示している。これは人口が急増したからではなく、加入者数が急減したのが原因。具体的にはプリペイド式SIMカードのうち長期間利用が無く、新規入金もされていないものについて、回線を切断(契約破棄)の措置をとったため。収益率改善の動きの一環とされている。もっともその後再び増加を示し、2022年では80.6%に達している。ここ数年の携帯電話の普及率の漸減ぶりについては「2016年秋のリライアンス・ジオ・インフォコムの市場参入により競争が激化し、料金低廉化とともに、事業者の統廃合が進んだ」との説明がある。

次はインドネシア。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インドネシア)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インドネシア)

インドネシアは多くの島々で構成されている国土の構成上、固定系インフラの普及には困難が伴う。それでも固定電話の普及率は2010年にはピークとなる16.9%を示すほどとなったが、その後はおおよそ減少。他方、携帯電話の普及率の上昇度合いは加速度的な動きを見せているのが分かる。技術革新や競争激化によるサービス料の値下げ、サービスそのものの向上など、裏付けする材料には事欠かない。ただし2014年以降は伸び率はやや鈍化。どうやら天井が見えてきた感があった。ところが2016年には大きく跳ね、それは2017年でも続いた。2014年12月以降、大手各社がLTEサービスを開始していることや、国ベースで4G網の整備に力を入れているのが奏功したのだろう。

そして2018年には大きな失速。これは2017年10月末からプリペイド式携帯電話の番号登録に関して規定が大幅に変更され、既存の利用者も再手続きが必要になり、住民登録番号にひもづけられた携帯電話番号の上限が基本的に3つまでに制限されたため。

次はブラジル。南米諸国ではBRICsの中で唯一含まれる国であり、日本との関係も深い。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ブラジル)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ブラジル)

ブラジルは2000年時点ではロシアに近い固定電話普及率を示している。一方で携帯電話はすでに1割超え。その後の伸び方は他国と比べるとやや緩やかなようにも見え、そして2014年をピークに値を落としているが、2022年時点では98.9%に達している。固定電話はほぼ横ばいで、2割前後を維持していたが、ここ数年では失速気味。

2015年以降の携帯電話の値の減少については、カウント方法が変わったとの説明は無いものの、「世界情報通信事情」によれば「スマートフォンの盗難が社会問題となっている。Anatelは2018年9月より違法端末の取締りを強化するプロジェクト「Cellular Legal」を実施しており、2018年12月以降、違法端末の通信を遮断する措置を実施している」とあり、これが影響しているものと考えられる(もっとも減少傾向はそれ以前から生じているが)。

最後にフィリピン。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、フィリピン)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、フィリピン)

伸び方のスタイルとしては、ブラジルやロシアよりは、インドネシアやインドに近い。固定電話の普及率は元々低く、時代を経てもさほど変化はない。一方で携帯電話の普及率はほぼ上昇を継続中。同国の情報伝達のスピード、そしてそれに伴う社会構造へ確実に変化を与えているのは間違いない。

興味深いのは携帯電話の普及率について、他国のように2003年や2005年のような「節目」が無く、ほぼ一様に上昇していること。インドネシア同様に島々で国が形成されていることもあり、携帯電話の必要性は昔から高かったものと考えられる。2019年にはイレギュラーな上昇ぶりを見せているが、原因は不明。恐らくは2019年2月にフィリピンで成立した「携帯サービスプロバイダーに携帯番号ポータブル制度の運用を求める法律」が影響しているものと思われる(【携帯番号ポータブル制度の2020年中の運用開始を求める、上院議員(ジェトロ)】)。

携帯電話の普及率においては、グラフの形を見ると一部では緩やかさを見せつつあるものの、多くの国ではさらに上昇する気配が感じられる。また、数字の上では判断ができないが、SMSのみの携帯電話からスマートフォンに切り替え、インターネットに「はじめの一歩」を踏み出す人も確実に増加する。

この流れが各国にどのような変化をもたらすのか。少なくとも各国国内はもちろん、世界に向けた情報のやり取りの窓口が大きく開いたことは間違いない。ビジネス様式や各国の社会情勢にも小さからぬ、そして確実な影響を与えることだろう。

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【世界全体の携帯電話の利用可能領域カバー率の実情(最新)】

【携帯・PHSなど合わせて233.8%の普及率…総務省、2023年3月末時点の電話通信サービスの状況を発表(最新)】

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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