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首都高トンネル事故の恐怖 サバイバルに必要なこととは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
出典:Webikeバイクニュース ※以下写真はすべてイメージです。

ドライブレコーダーに映った恐怖の瞬間

トンネルの先に燃え盛るトラック、充満する黒い煙。まるで悪夢のような光景だ。

12月17日午後11時ごろ、川崎市の首都高湾岸線の川崎航路トンネルで走行中のトラックから火が出て全焼。その付近で計14台が絡む4件の事故が発生し、路線バスを運転していた男性(50歳)が死亡、28人が怪我をして22人が病院へ搬送、内3人が重傷を負うという痛ましい大事故が発生した。

ニュース映像などで公開されたドライブレコーダーの映像には、恐怖の瞬間が映し出されていた(YouTubeなどで探すことができます)。トンネル内を走行していると先のほうに一番左の車線で炎に包まれるトラックが見える。「あれ、何だろう!?」という感じで、それを避けるように追い越し車線から近付いていくと、あっという間に黒煙で視界がほとんどゼロになり、次の瞬間、なんと目の前に停止している別のトラックが突然現れる。ドライバーは咄嗟にブレーキをかけながら左に急ハンドルを切り、紙一重でぎりぎりかわす様子が映っている。停止していたトラックは実はそれ以外にも数台あって、それぞれハザードランプを点滅させていたが、充満する黒煙の中では数メートル手前まで近づかないとまったく見えないことが分かる。文章で書くと長いが、この間たった10秒足らず。間一髪、追突を免れたドライバーは幸運だったと言えるだろう。

煙が視界を閉ざした

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何故こんな大事故になってしまったのだろう。最初の原因を作ったのは炎上したトラックであることは間違いない。発火の理由は分からないが、トラックはトンネル内という逃げ場のない非常に危険なエリアで路肩に寄せて停止していた。予期せぬトラブルかもしれないが、運転者は何らかの責任は問われることになるだろう。

一番の不運は黒煙が煙幕のように視界を閉ざしてしまったことだろう。換気の仕組みにもよるようだがトンネル内では進行方向へ煙が流れやすく、後続のクルマからすると炎上するトラックは見えるが、その先に黒煙が充満している様子に気付くのが遅れたようだ。もし手前に煙が流れていれば、誰もが異常に気付いて早めに減速し始めたはずだ。先のドライブレコーダーの映像からも、ほとんどのクルマが速度を緩めずに炎上するトラックの横を通過していく様子が見てとれる。

まさか、煙の中に別のトラックが停車しているとは誰も思わなかったはず。あるいは急減速すればかえって追突される危険があると思ったのかもしれない。運転手が亡くなった路線バスも黒煙の中でトラックに追突した模様だが、プロのドライバーでも判断が難しい状況だったとは思う。

まずは速度を落とすべき

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我々ドライバーやライダーは万が一の事故を回避する、あるいは回避できなくてもダメージを最小限にする方法を常に考えなくてはならない。まずできること。それは異常を感じたらともかく「速度を落とす」ことだ。炎上するトラック、充満する煙、ドカンドカンという衝突音など、ドライブレコーダー映像からは、その時その現場でいろいろな異常が起きていることが伝わってくる。今回の事故では炎上するトラックの傍を、速度を落とさずに通過していくクルマが多く、それが多重事故につながった感もある。

こんな事故現場にいたらパニックになるのも仕方ない気もするがそこは冷静に対応したい。もし自分がバイクで走行中だったら、炎上するトラックを発見した時点でまずハザードランプを出しながらポンピングブレーキで後続車両を牽制しつつ減速。生身の体で黒煙の中に入っていきたくはないので、たぶん炎上するトラックのなるべく手前で路肩にぴったりバイクを寄せて停めて、すぐに一段高くなった避難路へ逃げて身の安全を確保する。もし停止が間に合わなくても、できるだけ減速しつつ煙の中に進入し、路肩に沿って止まらずに安全な場所までゆっくりと進んでいくだろう。煙は上のほうへ充満するので、火災が拡大していたらすぐにバイクを捨てて口を塞いで低い姿勢で非常口まで移動すべきだ。

事故現場をフラフラ歩かない

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それと気になったのは、事故直後に道路上をフラフラと歩いているドライバーたちの姿。茫然自失か野次馬根性なのか、これは非常に危険だ。高速道路の事故でよく言われることだが、とにかく車両から離れること。自分の身を守ることを最優先に考え、ガードレールの外など安全な場所にすぐに避難することだ。高速道路では路側帯に停めていても追突される可能性が高い。ましてやトンネル内などは視界が悪く路側帯も狭い。クルマに乗ったまま、あるいはバイクの近くで悠長に携帯電話などかけていてはダメだ。

もちろん、これは理想論であって状況によって取るべき対応も変わるだろうし、自分でも正しい行動ができるかどうかはその時になってみないと分からない。ただ「こうした事故も起こりうる」と想定して普段から頭の中でシミュレーションしておくことが大事ではないか。そして、制度化やマニュアル化も大事だが、最終的には状況判断と直感を信じて自分でサバイバルする意思が大事だと思う。

年末年始、帰省ラッシュや行楽で高速道路も混雑が予想される。どうか安全運転と共に、もしもの場合の危険回避行動についても再確認していただけたらと思う。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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