他人が自分との会話中にスマホを見てると不愉快に、でも自分は…いまどきの中高生のデジコミ事情
携帯電話、特にスマートフォンの普及に伴い子供達の間にも、インターネットを使ったコミュニケーションが深く浸透し始めている。それと共に作法や倫理観の点で悩み、戸惑い、不快感を覚えることも増えている。その実情を2014年12月にベネッセ教育総合研究所が発表した調査報告書「中高生のICT利用実態調査 2014」を基に探っていく。
今調査対象母集団では中学生が87.3%、高校生は96.6%がインターネットを利用している。その上、インターネットを用いる時間の6割から7割程度は、メールやチャット、ソーシャルメディア、ツイッターのような、意志疎通・交流サービスを利用しており、多分に意志疎通ツールとしてインターネット機器を用いていることが分かる。
それでは中高生たちは、インターネットを用いたコミュニケーションについて、どのような意識を抱いているのだろうか。インターネット利用者に限定して想定されうる考えを例示し、「とてもそう思う」「まあそう思う」「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」の4択から1つを選んでもらい、肯定派の前2つの回答値を合算した結果が次のグラフ。項目の並びは中学生で高い順としてある(「メール」は電子メールだけでなくLINEなどのチャットや各種ソーシャルメディアのダイレクトメールも含まれる)。
中高生共にもっとも同意率の高い内容は「メールが来たらすぐに返事を出す」で6割前後。メールが来たらすぐに返事をしてしまう人が多数に及ぶ。これは「メールなどの投げかけの返事が(すぐに来)無いとイライラする」心境の裏返しと考えれば道理は通る。つまり、メールをリアルタイムな言葉のやりとりと同じ感覚でとらえていることになる(目の前に居る話し相手が、こちらの呼びかけに応じずじっと黙っていたら不安になるのと同じである)。
一方でメールなどのやり取りにおいて「メールやインターネットで知らない人とやり取りをするのは怖い」との回答も5割強に達している。不特定多数の人との交流が可能なのがインターネット上のコミュニケーションではあるが、それ自身に腰が引けることがあるとの考えを持つ中高生が多数いることが分かる。
また、スマートフォンの普及率が高まるに連れて発生場面が増えている、「自分が直に話をしている最中に、友達が携帯電話などを見ていると嫌な気持ちになる」との意見には4割前後が同意を示している。インターネット上のやり取りのためにしばしば目を留めチェックをしたくなる心境には理解を示しつつも、直に話している自分がないがしろにされた気持ちが沸き上がってしまう。これは仕方のない話ではある。
「直に会話を交わすより、メールの方が気持ちを伝えやすい」「顔文字や絵文字、スタンプは気持ちを伝えるのに欠かせない」など、デジタル世代らしい感想を抱く人も少なくない。
中高生の違いを見ていくと、「メールやチャットを終えるタイミングが難しい」「携帯電話などがいつも手元に無いと不安」の値が中学生よりも大きく伸びており、メールなどのコミュニケーションツールへ一層夢中になり、ついやり取りを引き延ばしてしまう状況が想像できる。またそれだからこそ、「メールのやりとりが嫌になることがある」との感情を抱く割合も大きく伸びていると考えれば道理は通る。
それほど多くはないものの「メールのやりとりがきっかけで友達とトラブルになった経験がある」との人が中高生共に見受けられる。また、中学生よりも高校生の方が「メールやチャットの中で無理に人の意見に合わせる事がある」「チャットグループやSNSのアカウントでキャラ・テンションを使い分ける」との意見への同意率が高い。インターネットのコミュニケーションの中で新たな作法を身に着け、それでもなお苦悩する中高生たちの様相を垣間見ることができるというものだ。
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