Yahoo!ニュース

自主欠席:子供に安心安全と活躍の場を:#コロナとどう暮らす

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ(みんなが楽しく学校に来られますように)(写真:アフロ)

<自主欠席。誰かを責めるだけでは問題は解決しない。感染予防と、日常生活の輝きを両立させる道を、みんなで探って行こう。>

■自主欠席

TBSの朝の情報ワイドショー番組「グッとラック!」で、今日(9月1日)「自主欠席」が取り上げられました。ネット上でも、話題になっています。

ここで自主欠席と言われているものは、新型コロナウイルスに関する不安のために学校を休ませることです。日本中に自主欠席をしている子供がいます。

新型コロナで、学校が休校になり、今は再開していますが、不安を感じている親子もいます。そこで、文科省、教育委員会、学校としては、コロナ不安による欠席を認めています。

本来は、小中学校は義務教育ですから、保護者は子供を学校に行かせなければなりません。けれども、今回はコロナ不安によるお休みを認め、欠席扱いしないことにしています。インフルエンザで学校を休む時は、出席停止となり欠席扱いされないのと同じです。

「コロナ不安で欠席、延べ2195人 名古屋市の小中高、夏休み明け」という報道もあります(中日新聞20200901)。

■自主欠席の思いと、番組、世間の反応、ネット上の声

いくらコロナ不安があるからとはいえ、子供を学校に行かせないことは簡単なことではありません。葛藤と悩みの中で、自主欠席を選んでいる保護者もいるでしょう。

ヤフーによる5月の調査ですが、「新型コロナとの共存社会、不安に感じていることは?」という質問への回答は、1番が雇用・就労、2番が医療・介護、そして3番目が教育でした。

学校に関する不安を持っている人も多いでしょう。

「感染したら、いじめられるの?」――不安を抱える子供たちへ【#コロナとどう暮らす】

自主欠席に肯定的な人の中には、番組の中で自主欠席をさせている親を否定的に扱っていることに不満を感じた人も多いようです。

ツイッターでも、「自主欠席」がトレンドにあがるほど、多くの意見が投稿されています。

「色んな考え方の人がいて、いいんだけど、色々悩んで決めた保護者や子供のことを否定しないで欲しかったな」

「私も、幼稚園やめさせました」

「リスク選択は個人の自由」

「マスコミにコロナ怖い洗脳された親が、子供にたいしても、わけわからず怖い怖いと言い続けることによって、子供たちが必要以上に恐怖心を抱いてるってことじゃないの」

「自主欠席は各家庭の好きにしたらいいと思うけれど学校に求めすぎかな」

「自粛している人や 自主欠席 している人に対して「正しく恐れる」ことを説く人がいるけど、今はまだ「正しい情報」が何かを見極められないと思うんだよな」

「各家庭で後悔しないように決断すればいいと思うけれど、いつまで自主隔離するつもりなんだろう。完全隔離では生活できない」

ネット上の声も、賛否両論です。

■日本小児科学会は

日本小児科学会は、「新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて」を8月1日に更新しています。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2020年8月1日現在、全国的に急速な患者の増加が確認されています。子どもの感染者数は成人に比較すると少ないですが、家庭内や集団生活の場における伝播により感染者は増えていることを想定した診療や感染対策が必要になっています。その一方で、可能な範囲で通常の日常生活を続けることも子どもの成長や発達には不可欠なことです。」

「感染しやすさは成人と変わらないこともわかってきました」

「子どもの患者が重症化する割合は成人と比べると少ないようです。しかし、成人同様に呼吸状態が悪くなることもあります」

大人と比べれば重症化しないけれども、感染しないわけではなく、重くならないわけでもない。ということでしょうか。

そして感染を防がなければならないのと同時に、日常的な遊びや学びも必要不可欠と言っています。子供の健康的な成長のためには、安全安心とともに、勉強や遊びを頑張り、活躍できる場が必要なのです。

子供は平気と油断してもいけませんし、感染防止のためなら日常生活はいらないわけでもありません。

■自主欠席とゼロリスクと思いやりの心

(写真はイメージ:提供:写真AC)
(写真はイメージ:提供:写真AC)

自主欠席を選んでいる親子を非難するべきではありません。自主欠席は、公に認められている行為です。

学校現場で、自主欠席している親子のことを否定的に評価するなど、私は聞いたことがありません。ただ学校関係者は、子供たちみんなが元気に楽しく学校へ来られることを望んではいます。

学校に来れば、様々なリスクがあります。登下校中の交通事故、誘拐など、悲しいニュースも時おり聞きます。学校内でも、熱中症や、いじめや、体育での事故などが起こることもあります。

感染症とこれらの事件事故は同じではありませんが、様々な危険性の中で、学校は運営されています。何と言っても、学校は安全第一です。それでも、平時なら子供達はプールに入り、校庭を駆け回ります。

自主欠席させている親に、「ゼロリスク」を求めるなという声もあるでしょう。ごもっともです。私たちは、様々な危険性の中で生きています。外出すれば交通事故の危険があり、自宅内でも階段から落ちる危険があります。

スポーツにはリスクが伴い、スポーツを全くさせないこともリスクです。勉強をさせすぎるのもリスクですが、全くさせないのもリスクです。

けれども、危険なことでも我慢しろというわけでもありません。たとえば今年はプール授業は中止です。修学旅行に関しても、ご意見は様々なのですが、生徒や保護者と教職員みんなで話し合い、中止にした学校もあります。

何かの事情で、ある種のリスクが高くなることがあります。気をつけるのは当然です。自主欠席させているご家庭には、考えがおありであり、それぞれの事情があるのです。

「ゼロリスクを求めるのは非現実的だ」と責めるだけでは、問題は解決しません。自主欠席させている保護者も、ゼロリスクを求めているのではなく、現状ではリスクが高すぎるとお考えなのでしょう。

大切なのは、相互理解と思いやりと、工夫です。

学校も教育委員会も、感染を防止しつつ、通常の日常生活を続ける工夫をしています。これから始まる運動会、体育祭も、学校によっては半日開催にし、競技も応援席のあり方も、様々に工夫しています。

教育委員会、学校として、これまでは37.5度以上の児童生徒は出席停止でしたが、夏休み明けからは37.0度以上に変更したところもあります(平熱が高い場合は申し出)。教職員の出勤基準も同様です。感染しても軽症者が多いことを受けた変更です。

専門家ですら意見が分かれる中、それでも子供達にとっては貴重な一日一日です。半年、一年の時間は、大人以上に大きな意味を持ちます。大人達が、話し合いの中で工夫を重ね、子供達みんなが元気に楽しく登校できる道を探りたいと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

心理学の知識と技術を知れば、あなたの人間関係はもっと良くなります。ただの気休めではなく、心理学の研究による効果的方法を、心理学博士がわかりやすくご案内します。社会を理解し、自分を理解し、人間関係の問題を解決しましょう。心理学で、あなたが幸福になるお手伝いを。そしてあなた自身も、誰かを助けられます。恋愛、家庭、学校、職場で。あなたは、もっと自由に、もっと楽しく、優しく強く生きていけるのですから。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

碓井真史の最近の記事