2022年の大胆予想、日銀のゼロ金利政策への回帰
2022年の予想として「日銀の金融政策の正常化」を挙げてみたい。これについてはありえないとみている人達と、あるかもしれないとみている人達に分かれそうである。私は後者に属する。希望的観測を含んではいるが。
ただし、現在の日銀の金融政策を取り囲む状況が以前に比べて、かなり変化してきていることも確かである。
日銀の金融政策の正常化がありえないとみている人達にとって、それが無理であるとの理由のひとつが日銀の物価目標の未達である。足下の消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、物価目標の2%とは距離がある。
しかし、ここにきて世界的にインフレ圧力が強まっている。これを受けて、イングランド銀行は利上げを決定した。FRBもテーパリングの加速化を決定するとともに、来年の利上げが視野に入ってきた。
ECBはコロナ危機で導入した緊急買い取り制度による新規資産購入を2022年3月末で打ち切ると決めたが、利上げに向けては慎重姿勢を維持した。ところが、ラガルド総裁などに対し、複数のECB関係者から物価の見方に対して異論が出ていたことも明らかになっている。
FRBは声明文で物価の上昇は一時的という文面を削除したように、来年に入っても物価上昇が続く可能性は十分にある。
さらに注意すべきは日本の企業物価指数が前年比9%もの上昇となっていることである。いくら消費者物価指数は低いといえども、物価上昇を警戒する必要性は当然ある。
その消費者物価指数も来年4月に携帯電話料金の引き下げ効果が剥落し、それが1.5%程度の上昇要因となる。来年2月や3月には醤油やマヨネーズ、ドレッシングなどの値上げが発表されている。2月に一般向けの電力料金も値上がりし、2016年の電力小売り自由化以降の過去最高値となる見通し。そこに円安要因も加わる可能性がある。となれば2%が見えてこないとも限らない。
その円安の要因が日銀が物価目標に縛られて動けないためとなれば、円安の進み具合次第では日銀が政策修正を迫られる可能性もありうる。
さらに現在の岸田政権は、リフレ派の影響を受けていた安倍政権や菅政権とは異なり、リフレ派とはやや距離を取っている可能性がある。
物価動向や政権との関係からみて日銀は以前に比べて動きやすくなりつつある。それでも黒田総裁の任期中は政策修正はありえないとの見方も強い。
しかし、欧米の中央銀行が動いて、日銀が動かないことに対し、物価や為替などの状況次第では批判が出ることもありうる。可能性は薄いのかもしれないが、それでも日銀の金融政策の正常化、つまりマイナス金利政策と長期金利コントロールの解除による、ゼロ金利政策への回帰は絶対ないとは言い切れない。