Yahoo!ニュース

今年の夏は結局、猛暑だったのか?冷夏だったのか?

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
8月30日まで3か月間の平均気温の平年差。(気象庁HPより)

8月も終わりです。夏の前は「冷夏予報」の声もあり、盛りには「記録的猛暑」と言われた今年の夏、結果はどうだったのでしょうか?

冷夏傾向と猛暑傾向が同居

気象の世界では、6月~8月が「夏」と扱われます。

この3か月間の気温を平年と比べると、結果は上図の通りです。「九州など西日本は冷夏傾向」「関東から北の太平洋側は猛暑傾向」だったということになります。

ただし、そう単純ではありません。

西日本でも7月下旬~8月上旬は高温でしたし、関東から北では8月なかば以降、夏らしくない天気・低温が続きました。

ひとくくりに「冷夏」「猛暑」と言える夏では、なかったわけです。

大気はバランスをとろうとする

今夏の平均気温平年差。赤が平年より高く、青が低い期間。(気象庁HPより)
今夏の平均気温平年差。赤が平年より高く、青が低い期間。(気象庁HPより)

この夏、気温が大きく変化した原因は、夏の太平洋高気圧が、シーズンを通しての仕事ができなかったためです。

太平洋高気圧は、7月下旬~8月上旬の夏のピークに強まり、高温をもたらしましたが、徐々に南に後退。雨雲や涼しい空気の侵入を許すことになりました。

ただ、気温は変動するのが正常な状態です。変動なく、ずっと高止まりしているほうが問題かもしれません。

山が高ければ、そのぶん谷は深くなるものです。8月の高温後の低温は、大気がバランスをとろうとした結果とも言えます。

終わりにしたい “ワンフレーズ夏予報”

毎年、夏前になると「今年は猛暑ですか?冷夏ですか?」と聞かれますが、季節はなかなか単純化できません。

今年のように、ひと夏の間に、暑い時期もあれば、不順な天候の時期もあるのが普通です。

“ワンフレーズ夏予報”は、情報の伝え手も、受け手も、そろそろ卒業する頃かと思います。

ちなみに、夏前に「エルニーニョだから冷夏」と単純化して報じられることもありましたが、最近の研究によると、近年は関連が不明瞭という報告が出ています。

『エルニーニョ=冷夏?』(8月2日/最後の段落に記載)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

増田雅昭の最近の記事