2021年の金融市場を振り返る(7月~9月)
7月
5日に財務省は令和2年度の租税及び印紙収入、収入総額が前年度比4.1%増の60兆8216億円だったと発表。法人税や消費税の納税額が昨年12月時点の見積もりを大きく上回り、平成30年度の60兆3564億円を上回って過去最高を更新
8日にECBは2020年1月から実施してきた金融政策などの戦略検証の結果を公表。物価目標を「2%未満でその近辺」から「2%」に変え、一時的な上振れを容認する姿勢を明確にした。
13日に米労働省が発表した6月の米消費者物価指数の上昇率は前年同月比5.4%となった。2008年8月以来、約13年ぶりの高水準に。
23日、東京オリンピックの開会式。
8月
3日の10年国債入札日に業者間取引で10年国債新発債の商いゼロという事態が発生。
3日の香港株式市場で、テンセント・ホールディングス(騰訊)株が一時11%近く急落した。国営新華社通信系の国営紙・経済参考報はゲームを「精神的アヘン」「電子薬物」だと批判。
5日、ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が世界全体で2億人を超えた。
8日、東京オリンピックの閉会式。
アフガニスタンで政府軍と戦闘を続けてきた反政府武装勢力、タリバンの幹部は、日本時間の16日朝早く、勝利を宣言。ガニ大統領は出国し政権は事実上、崩壊した。
16日発表した2021年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%増、年率換算で1.3%増となった。プラス成長は2四半期ぶり。
24日、東京パラリンピック開会式。
30日、 米軍のアフガニスタン撤退が期日を前に完了。
9月
菅首相は自民党の臨時の役員会で、29日に行われる自民党総裁選挙に立候補せず、辞任する意向を表明。
8日に内閣府が発表した4~6月期の実質国内総生産改定値は、前期比0.5%増、年率1.9%増となった。速報値の前期比0.3%増、年率1.3%増から上方修正された。
9日のECB理事会では、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入ペースを10~12月(第4四半期)に減速させることを決定。
10日に米労働省が発表した8月の卸売物価指数は前年同月比8.3%上昇となった。前年比の伸び率は比較可能な2010年11月以降で最大の伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も6.7%の上昇となった。
14日の東京株式市場では、前日比222円73銭高の3万0670円10銭となり、2月につけた年初来高値を上回り、1990年8月以来約31年ぶりの高値をつけた。
21日に次期デリバティブ売買システム(J-GATE3.0)が9月21日に稼働。この稼働に合わせて、大阪取引所及び東京商品取引所の取引制度の見直しが行われた。債券先物オプション取引の権利行使価格の刻みについて、50銭刻みから25銭刻みに変更。
中国の不動産開発大手、恒大集団(Evergrande Group)が、巨額の債務を抱えて経営破綻の瀬戸際に追い込まれているとの観測から20日の欧米市場ではリスク回避の動きに。
21日に日本取引所グループ(JPX)傘下の大阪取引所(OSE)で21日、米指標原油などに連動する指数の先物取引が新たに上場。
29日、岸田文雄氏が第27代自民党総裁に就任。
2022年1月5日「円安が進行しドル円は5年ぶりの116円台、この円安のカラクリとは」
外国為替市場で円安・ドル高の流れが再び強まってきた。ドル円は116円を突破し、一時116円34銭と2017年1月11日以来の高値を付けた。
今回の動きは対ユーロなどからみても、ドル高というよりは円安となっている。ユーロ円も昨年12月はじめの127円台から上昇基調(円安ユーロ高)となっており。ここにきて131円台をつけている。
それではこの円安の要因とは何であろうか。何かしら日本売りとなるよう要因はみあたらない。日本でも新型コロナウイルスの感染が再拡大しつつあるが、欧米の感染状況比べればかなり押さえ込まれている。政権も安定しており、円の売り要因とはなっていない。
この円安の要因は金利差にあると見ざるを得ない。3日の米国債券市場では米国債は売られ、米10年債利回り(長期金利)は1.6%台に上昇してのスタートとなった。米長期金利は昨年12月はじめに1.3%台となっていたが、そこから上昇基調を強め、特に1月3日の米長期金利は1.63%と前日の1.51%から大きく上昇した。これには社債発行が相次いだことで、それを買う資金を捻出するためなどによるも国債売りも指摘されたが、最大の要因は日米の中央銀行のスタンスの違いとみられる。4日は一時1.68%まで上昇した。
今年の米国の中央銀行であるFRBは資産買入を縮小させる「テーパリング」をはやめに終了させて、利上げを行う準備をしつつある。年内に何回程度利上げがあるのかを市場は見極めようとしている。政策金利の上昇によって米長期金利も上昇圧力を強めることとなり、それがあらためて市場で意識されてきた。
前回時のテーパリングや利上げ時の米長期金利の上昇は比較的抑制されていた。しかし、今回については金融政策の正常化の背景に経済正常化とそれにともなう物価上昇があり、特に物価が想定以上の上昇となっているだけに、市場が利上げに過敏に反応しやすい状況になりつつあるともいえる。
それに対して日銀は消費者物価指数が2%の物価目標を達成できないことで正常化に動けないとの見方も強い。このため、日米の政策金利の差とともに長期金利の格差も広がるとの観測から、ドルが買われ円が売られやすいという構図となっている。
米長期金利は上昇したといっても、まだ昨年10月につけた1.7%にも届いていない。しかし、外為市場ではさらに先を読んでで動いているともいえそうである。ただし、売り方の買い戻しが入ったとの見方もあり、そのショートカバーを呼び込むための仕掛け的な動きである可能性もある。